イナゴの佃煮、コオロギの味噌

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 さて、ここからが本題のコオロギ採集である。デデとギーは校舎の外に出て校庭だった場所へ降り立った。バチヅルで草を掻き分けると体長二十センチメートルほどのフタホシコオロギがいた。「できるだけ活かした状態で持っていきたい」とデデが頑丈な布袋を広げるとギーは「無理っす」と即答した。 「その方が多分美味い」 「それはそうなんだろうけど」 「俺がコオロギを押さえるからギーは後脚を切除して欲しい」 「ええー」  デデはバチヅルを放り投げた。コオロギの上に馬乗りになるようにして脚で身体を挟み込んだ。両手でしっかり押さえ「後脚」とギーを見上げる。ギーは「あーもう」と頭をグシャグシャ掻いてからデテのバチヅルを掴んでコオロギの後脚に振り下ろした。  そんな作業を数回繰り返して八体ほどの巨大フタホシコオロギを手に入れた。跳ねる能力を失ったコオロギは大人しい。デデは袋の口をしっかりと縛って肩に担いだ。 「これでご飯が作れる」 「良かったっすね、よし帰ろう」ウンザリした顔のギー。何度もバチヅルを振り下ろした腕を振ったり揉んだりしている。デデは頷きバチヅルを手に取った。が、すぐに「あ」と声を上げた。 「何なんすか」 「今イナゴいたよな」 「イナゴ?」 「あれも取って帰りたい」 「コオロギ取ったじゃないすか」 「イナゴの佃煮も作りたい。今夜は豪華なディナーになる」  再びガサガサと草むらに足を踏み入れるデデに「帰りましょうよー」とギーが額を押さえながら言った。
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