アリの子とジャガイモのポタージュ

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「前にもこれくらい膨らんだことがある」それからロックは後ろにいる仲間を見遣ってから「デデ、しばらくここにいてくれないか」と言った。「俺達は狩りの仕方もわからない。教えて欲しいんだ。どうやって生き延びたらいいか」  デデは唇に手を当てて少し考えてからポケットの中に押し込んだシートを出した。「報酬が欲しい。これ」 「なんの薬だ?」 「精神刺激薬。俺は普通のヒトより長く眠る。稼働できる時間が短いんだ。薬があればそれを延ばせる」 「今残ってる病院に掛け合って調達する」 「ムシの調達は俺がするが、やり方を覚えたいなら誰かひとりを同行させた方がいいと思う。今日みたいに、できるだけ安全な方法を考えながらやりたい」 「わかった」  予定にはない展開だが、まあいいやとデデは思った。カインの面倒を一生見るようになったとしても、腹の中の胎児が発達と退行を繰り返す彼の寿命は長くはなさそうだ。ここに留まるのも長くて七十年といったところか。それに、カインを観察することでクィーのことが少しはわかるようになるかもしれない。デデはロックとその後ろの仲間を交互に見ながら「とりあえず今日はそれぞれの家に帰ってもらっていい」と言った。皆一様に肩の力を抜くように息を吐いた。
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