アリの子とジャガイモのポタージュ

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 アリの子のポタージュで当分の栄養をカインに与えている間、ロックはカインの生い立ちとこの町のことを話し始めた。ここは元々は観光地で、夜きらびやかに輝くビルや橋を眺めに来る人々が絶え間なく訪れていた。が、世界中のどの都市もそうであるように、クィーの襲撃で全てが変わった。攫われた人々は見るも無残な姿で地面に転がり落ち、性別もわからない状態の肉塊もあった。  カインが攫われたのは一年前。両親や妹とともにクィーの襲撃に遭った。両親はふたりの肉が混ざり合った状態で発見され、妹はどういうわけか身体の中と外が入れ替わるように皮膚が捲りあげられていた。カインは無傷かと思われたが、一ヶ月ほどで下腹部が異様に膨れ上がってきた。病院で診てもらうと子宮に似た器官の中に胎児がいた。ヒトの赤ん坊とは比べものにならない早さで発達する胎児。クィーの子どもだと誰もが恐怖を覚えた。  解決策を見出したのは全くの偶然だった。食欲のなくなったカインに旅人が栄養のあるお茶と称してムシを煎じたものを飲ませたら膨らんでいた腹が縮んだ。町の猟師がカインのためにムシを狩っていたが、先月巨大な甲虫に食い殺された。
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