5人が本棚に入れています
本棚に追加
イナゴの佃煮、コオロギの味噌
コオロギは比較的狩りやすいらしい、とロックが言った。元々食用コオロギを養殖していたのだが、それが巨大化した例があるらしく、養殖というのもあって完全に野生由来のコオロギよりは大人しいとのこと。本当かどうかはデデには判別しがたいが、作るメニューは決まった。デデは地元民に味噌と醤油を調達するように頼んだ。慣れ親しんだ調味料なら味が推測できるし使いやすいと思ったのだ。
ロックの仲間をひとり連れて元食用コオロギがいるという草むらを目指した。ひとりだけ連れて行くのは万が一命を落とすレベルの事態に遭遇した時に犠牲を小さくするためだ。彼の名前はギーと言ってロックよりも若い。背が高くデデと同じくらいはある。ギーは千年生きている人工生命体であるデデに興味津々だ。確かに今は製造されていない骨董品。物珍しさはある。
「千年前ってどんな世界だったんですか。もっと人口多かったんすよね。町もギュウギュウだったんじゃないすか」
「ギュウギュウってわけじゃないが。まあ、今よりはヒトとの遭遇率は高かったかな」
「俺は今ぐらいスッキリしてる方が好きかもな」
まあ、確かにスッキリはしてるよな。デデは苦笑した。デデも静かな今の方が良いと思う瞬間はある。
最初のコメントを投稿しよう!