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「だんだん腹が膨れて、エコーで診察したら赤ん坊がいたんだ。男にはないはずの子宮まで見えて」
「子宮口は?」
「ない。だから腹を突き破って出てくるかもしれない」
「ホラーだな」適当に相槌を打つデデ。ロックは続ける。
「デカいムシから作ったお茶が効いたんだ。だから猟師が狩ってきたものを食わせてなんとかしてた。でも先月猟師がムシにやられて死んじまって」
そのままどうすることもできずにカインの腹の中の胎児が発達してしまったというわけか。大体わかった。デデは病院を出てから「どこに向かえばいい」と訊ねた。
「南の空港の滑走路を越えた辺りにムシが出る場所がある」
「了解」
「なあ」改まったような口調でロックが言う。「日本の人工生命体ってことは、おまえまさかホシグチの」
「俺は千年前の骨董品だ。今の星口玩具とは関係ない」
デデはあくまでも冷静に応じた。ロックも「そうか」と引き下がった。
空港は今は使われていないようで、滑走路はアスファルトが割れそこから雑草が生い茂っていた。管制塔と思われる細長い建造物を覆うように草が絡まり大きな木のようにも見える。バチヅルで草を掻き分けて進むデデをロックが慌てて制止した。見れば足元に体長三十センチメートルはあろうかというアリがいた。
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