アリの子とジャガイモのポタージュ

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 病院に戻ると汗だくのロックが床に座り込んでいて、それを数人が取り囲んで材料調達の結果を聞いている様子だった。女性がデデに駆け寄り「あんたあのアリ倒してきたのかい?すごいじゃないか」と肩を叩いた。 「倒してはいない。アリの子を取ってきただけ」 「それでもすごいよ。銃も持ってないのに」  デデは賞賛を何とでもないような表情で受け止め「料理をしたいから手伝って欲しい」と言った。「食材と調理器具、あとカインがあのままだと可哀想だから着替えと新しいシーツ」  料理はかつて病院食を作っていたであろう広いキッチンを使った。電気と水道は通っていて加熱も問題なくできる。ロックが仲間の数人とアリの子を磨り潰していた。「わあ、幼虫出てきたぞ」とひとりが声を上げた。デデがエシャロットを刻みながら顔を上げると卵からオオヅアリの幼虫が顔を出していた。 「皮も柔らかそうだな。そのまま磨り潰して欲しい」 「うえー」と言いつつもデデの指示通り幼虫をゴリゴリ潰していた。その傍では女性が数人でジャガイモの皮を剥いている。とりあえずそれらしい品は作れそうだ。
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