第三章

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覆面パトカーに乗り込むと、薫が先ほど聞き込みをした“市川”と表札にあった家の方を見て、「ちょっと面倒な人でしたね」と菊村に話しかけた。すると、菊村も同じようにその家の方を見て、「あぁ。この聞き込みが悪い方にいかなきゃいいが……」と、不安の残像を孕む言葉を吐いたのであった。 続いて、菊村と薫が向かったのは、ホシミノにある某有名コンビニ店である。そこのレジカウンターの中で必死にレジを打つ青年が一人______。「彼だな」「彼ですね」と、菊村と薫はその青年を目で捉える。レジの前には結構な数の客が並んでいたが、それに割り込んで、菊村はその客たちと、青年に警察バッジを見せて威圧すると、青年の方を向いて「三上祐輔さん、ですよね?ちょっとお聞きしたいことがあるんですが、よろしいですか?」と聞いた。その青年、三上祐輔は戸惑い、裏の事務所にいたもう一人の店員を呼び出して、事情を説明した。その店員は相手が警察だろうと関係なく、事務所から出てきてこう言った。 「警察っていうのは他人の仕事まで妨害するんですか?私は休憩中で、彼はお客さんのレジ対応の途中。それなのに、何の事件の捜査なのか知りませんが仕事も休憩も中止しろって?ふざけんのもいい加減にしてくれます?」 この女性店員は『公務執行妨害』というのを知らないのだろうか______。その場に居合わせてしまった三上も、そんなことを言われてしまった菊村も、その女性店員に圧倒されてしまっていたのである。そんな時、薫がその店員に提案する。 「じゃあ、あなたの休憩が終わったら、彼を少し借りることはできますか?もし彼が休憩にまだ入っていないなら、我々の聞き込みの後に入ってもらうっていう形なら、何も文句はないはずですよね?」
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