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「なるほど」と言った左門寺は、菊村に「この件に関しても裏を取ってくださいね」と言った。
「もちろんですよ」菊村が言った。だが、繭美は左門寺のその発言を良くは思わなかった。これでは明らかに疑われているのがわかるからである。繭美は不安そうな表情を浮かべ、「私はそんなに疑われているんですか?」と、菊村たちに聞いた。菊村が聞かれたはずなのに、その質問には左門寺が答えたのである。
「えぇ。あなたはたしかに被害者に対して強烈なまでの恨みを持っています。それは先ほどのあなたの発言から容易に想像できます。そんなあなたが疑われないはずがないでしょう」
その歯に衣着せぬ発言は、繭美を怯ませた。彼女は少し俯いて、「そうですか……」と呟くと、「たしかに、私はあの男を憎んでます。殺したいほど」と続けて言った。
「奴が死んだって、娘は戻ってきません。失われた命は絶対に戻って来ない……でも、正直清々しましたよ。あの男が死んでくれて」
繭美の目はまっすぐ左門寺を見ていた。そしてその目は、全員に語って聞かせたその素直な気持ちを物語っていた。それを見た左門寺は、「えぇ、そうでしょうね」と口元だけ笑って言った。
「ちなみに、ピアノの曲はどんな曲を弾いていたんです?」
左門寺は続けて繭美に聞いた。それを聞いた後、彼は「実は僕も昔、ピアノをやっていたことがありましてねぇ______」と話を続けて、それに一同は驚いていた。幸守も、それについては初耳で、内心、嘘をついているとも思っていた彼は「嘘つけよ、左門寺」と、乾いた笑いを含めて言った。
「嘘じゃないさ。これでもみんなからは褒められるくらい上手なんだよ」
幸守は信じられなかった。彼が疑いの目を向けていると、左門寺は「じゃあ弾いてみるかい?」と、そんな彼を挑発する。
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