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繭美はそれを聞いてから少しだけ幸守の方を見る。“助手”と紹介されて、訂正しようとも思ったが、それすらも面倒であった幸守は「ところで今先生と一緒にいる編集者ってのは、この前俺と一緒にここに来た奴ですか?」と繭美に聞いた。
「えぇ、たしかそうだったと思います。名前は基部さんって言ってましたから」
「そうですか、わかりました」と、幸守が言うと、左門寺が「その人の連絡先、たしか知っていたよね?」と幸守に聞く。
「あぁ。俺の担当編集でもあるし、友達だからな」
「じゃあ僕たちはその人を当たろう。警部、ここからは二手に分かれましょう。その方が格段に早い」
左門寺は菊村の方を見て提案する。菊村もそれに賛同し、「たしかに。その方がいいですね」と言った。
「じゃあ我々はとりあえずここのお向かいさんに話を聞きに行きます。それから、聖郷先生の助手をやっているという方にも話を聞きに行きましょう。それで、その助手の“三上さん”というのは、今どこにいらっしゃるんでしょうか?」
菊村が尋ねると、繭美はすぐに答えた。
「三上くんはいつも街のコンビニでアルバイトしてるんですよ。元々大学生だったんですけど、主人の助手を務めるようになってからはその大学も辞めて、ここで住み込みで小説を書くようになったんです。それで、少しでも生活費をと、アルバイトをしてくれてるんです」
「なるほど。それじゃあ、我々はそのコンビニにも向かいましょう。左門寺先生と幸守先生は、聖郷先生をお願いします」
こうして、一同は二手に分かれて捜査を再開することにしたのであった。
「それじゃあ、我々はそろそろ行きましょうか。他にも色々調べなきゃならないこともありますし」
菊村がそう言うと、繭美は「そうですか」と言う。その時の彼女の顔は、どこか緊張から解放されたかのように見えた。
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