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葬儀などのことでこれから慌ただしくなることは分かっているが、何よりも先に今までのことをここに綴り終えることを優先した。今書くべきだと思ったから書いていた。こんなことを書くのは人生で初めてで、上手く書けてるか分からない。思い出したくても思い出せない部分があるのが歯痒いが、飯も食わずにここまで書き終えたのだ。
一息つくと、死装束に身を包んで寝ている祖母の元に行った。昔より皺が深くなった顔を見て、私は羽織っているジャケットを脱いだ。
「おばあちゃん、このジャケット着て父さんに会ってあげて。父さん絶対喜ぶからさ」
そうしてジャケットを祖母の死装束の上に静かに被せた。
「それとさ、これが最後の我儘だから」
言い終えると、私の手は祖母の頭に伸びて、白髪の上に置き、ゆっくりと撫でていた。
「今までありがとう」
撫で終えた私は頭を下げた。
「いつか皆んなみたいにさ、家族持つよ。子どもが出来たからさ、俺みたいに我儘言わせるから。絶対に言わせるから。見ててね」
その言葉を見守っていたのは、安らかに眠る祖母と父が着ていたジャケットと母が買ってくれたロボットのオモチャだった。
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