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葬儀から数日後、父の写真の前で小さくなる祖母がポツリポツリと父のことを語ってくれた。
「大智はさ、世間でいうマザコンだったんだよ。でもさ、私にとってそれは嬉しかったんだ。冷えた親子でいるよりも、いつでも寄り添ってくれる方がいいからね。世間になんて言われようと、大智はそうあってほしかったの。私の我儘だけど、あの子も吉木と同じ、一人っ子だったしね。大人になってもね、可愛いんだよ我が子は。全く親バカだよね」
祖母のその話を静か聞いてから私は口を開いた。
「ねぇおばあちゃん、父さんが残してくれたジャケット、今着てもいい? 」
「……いいよ」
そうしてジャケットに袖を通すが
「まだブカブカだ。」
「もっと大きくならないとね」
「うん、絶対身長のばすよ」
「ねぇ吉木、また我儘言ってね」
「……うん、ありがとう、おばあちゃん」
祖母は前と変わらず、自分の息子が残した孫を、我が子のように可愛がってくれた。そんな祖母は、私が成人になると同時に力が抜けるように衰弱していった。そして数時間前、この世を去ったのだ。
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