六口目

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六口目

慣らしは毎晩やる。ロケ前夜だって関係ねえ。 「あした早えからもー寝ねえ?遅刻したら大変だ」 背中でベッドが弾み、息を呑むほど端正な顔が目の前に来る。 「毎晩ずこばこするて宣言したの忘れたん?」 茶倉練は厄介な怪異を宿している。コイツは隙あらば宿主を乗っ取ろうと暴れる厄種で、だから俺は、その半分を引き受けることにした。 俺と茶倉は遠い親類に当たる。鳥葬の巫女が産んだ男と女の双子が俺達のご先祖様だ。世代を経て限りなく薄まってるといえど、この体にも茶倉と同じ血が流れてるんだから、きゅうせん様を受け入れられねえはずはねえ。 俺は茶倉を失うのが怖い。体の中から化け物に食らい尽くされいなくなるかもって考えたら気が狂いそうに恐ろしい。きゅうせん様の慰み者にされてんのも知っちまったらほっとけねえ。 「お手柔らかに」 「無理」 茶倉が俺のバスローブを剥ぎ、自分のバスローブを脱ぎ捨てる。茶倉は約束を守った。俺が引っ越してきた日から毎晩体を重ね、念入りに苗床を耕している。 「ッ、は」 火照った唇が首筋を滑り、鎖骨のふくらみを啄む。乳首を吸い立てられて思わず腰が浮く。 「茶倉そこ、くすぐって、ぁは」 「息当たっただけで先っぽ固くなっとる。ド淫乱が」 「引っかかれると切なくて、ぁッ」 部屋の電気は消してねえ。茶倉は暗闇が苦手だ。明るい照明の下、体の隅々まで暴かれ羞恥心が燃え上がる。両手でシーツを握り締め、爪先に巻き込んで蹴立てる。鈴口がドクドク脈打ってカウパーがあふれ出し、乳首の芯が固くしこってく。 「こっちもビンビン。節操ない体やね」 「もっ、いいから」 「ええことないやろ、ちゃんといじったらな」 漆黒の数珠を巻いた手が器用にペニスをいじり、カウパーを伸ばして育てていく。 「あッ、あッ、ぁッあ」 長くしなやかな指が裏筋をくすぐり、感じやすい括れを逆撫でする。甘酸っぱく張り詰めた睾丸と会陰を揉みほぐされ、前立腺にじれったい刺激が響く。 頃合と見て前戯を切り上げ、俺の脚を抱えてこじ開ける。 「挿れるで」 「…………!」 力を込めて奥歯を噛み締め、衝撃に耐える。茶倉が切なげに顔を歪め、赤黒い屹立を挿入していく。襞を引き伸ばし直腸を埋める怒張が前立腺を押し上げ、瞼の裏で閃光が爆ぜる。 来た。 裸の背中に腕を回しキツくキツく抱き締める。縋り付いたことで汗にぬめる肌の密着度合いが高まり、一際敏感な粘膜に急角度で食い込む。 邪悪な何かが体内に根を張り、蠢く群れが解き放たれた。 「うっぐ、ぁッぁあっあ、あっあン」 俺の尻をミチミチこじ開けビチビチ跳ねながら侵入してく何か、その正体はきゅうせん様の分体の霊体ミミズ。 「まだ体が出来てへんから受肉はせん。お前にもぐりこんどるのは幻や、本物ちゃうで」 「苗床として、ンッふ、未完成ってこと?」 「せや。苗床として成熟したらお前もきゅうせん様の子を孕む、ケツから産まされる。分体はもとから生命力が弱い、ほっといても自然に消滅する」 きゅうせん様と苗床にゃ相性がある。苗床として未熟で未完成な俺は、茶倉を介しきゅうせん様の霊力を注ぎ込まれても孕まねえ。 だからって余裕かましてらんねえ、現に今出たり入ったりしてる怒張から無数の触手が枝分かれし直腸を捏ね回す。 「なんかそれって、俺とお前の愛の結晶、みてえじゃねえ?」 脂汗にまみれ口角を上げる。ミチミチ窄まりを押し広げ、ぐぷぐぷ肉襞の奥に潜り、発情した触手が結腸の入口にまで達する。 「!あっが、」 苦しい。息が詰まる。凄まじい圧迫感が下っ腹を襲いボコボコ胎動を感じる。もちろん幻覚だ、これは本物じゃねえと理解してる。 だけど今俺の中で蠢く触手は本物で、外気に触れた途端霧散するにせよ中にいる限り本物に等しくて、絡まり解れて肉を耕し苗床に造り替えてくのをリアルに感じる。 「あ゛ッ゛、あ゛ーーーーー」 かひゅっと息を吐いて白目を剥く。茶倉のピストンが速まって力強く腰を叩き付ける。気持ち悪い。吐き気が膨らむ。前立腺を突かれる都度滅茶苦茶に腰が跳ね、汗と涙と鼻水を大量に垂れ流す。慣らしはキツい、死ぬほどしんどい。男が妊娠するってこんな感じなの? 「ぁっ、ひ?」 釣られて視線を下ろし衝撃的光景を目にする。腹の表面、皮膚のすぐ下で生き物みてえに血管がのたうってる。否― 「お前っ、の、やんちゃミミズで、俺ん中いっぱい」 激しさを増す胎動に合わせグロい畝が伸び縮みし、触手がうねり耕す下っ腹は子袋が実ったみてえに淫蕩な熱を孕んで、無理矢理こじ開けられた全身の経穴に霊脈が通っていく。
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