11. 素敵なプレゼント

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11. 素敵なプレゼント

 翌日も王宮の庭園に行くと、今日は猫姿ではなく、人間姿のライモンドがいた。  やっぱり、猫の時のずんぐりむっくりした姿とは違って、どこか凛とした雰囲気がある。言ってみれば美少年だ。  美少年ライモンドは、猫姿の私の方に駆け寄ると、しゃがんで目線を合わせてくれた。 「昨日は手当てしてくれて、ありがとう。傷は塞がったんだけど、念のため今日は大人しくしていたほうがいいと思って……」  確かに、怪我をしたばかりなのだから、様子をみた方がいい。私は自分の気の至らなさを反省する。 「そうよね。私ったら気がつかなくてごめんなさい。今日は遠慮しておくわね」  そう言って帰ろうとすると、ライモンドが引き止めた。 「あ、待って。そういうことじゃなくて……。君に渡したい物があるんだけど、いいかな?」 「渡したい物? 何かしら?」  見当もつかずに小首を傾げると、ライモンドが上着のポケットから何かを取り出した。 「これ、昨日手当てしてくれたお礼に。猫用の首飾りなんだけど……」  ライモンドが差し出したそれは、小さな紫色の薔薇の飾りがついた、可愛らしい首飾りだった。私の瞳の色とお揃いで、彼が私のために選んでくれたことが感じられた。 「まあ、とっても素敵だわ! どうもありがとう!」  私が感謝を伝えると、ライモンドは恥ずかしそうに微笑んだ。 「喜んでもらえて嬉しいよ。……僕がつけてあげてもいい?」  確かに、猫姿のままでは自分でつけられない。私はライモンドに付けてもらうことにした。  首の回りを触られて、なんだかこそばゆい。 「できたよ。……うん、やっぱり似合う。とても可愛いよ」  自分では見えないが、ライモンドがそう言うなら、きっと本当に似合っているのだろう。  家に帰って鏡で見るのが楽しみだ。でも、そういえば、人間の姿に戻る時に首がしまらないかしら、なんて考えていると、ライモンドが説明してくれた。 「自分で試して分かったんだけど、猫姿の時に身につけたものは、人間に戻った時には消えるみたいだ。あ、また猫になれば、ちゃんと身につけているから安心して」 「確かに、元々着ているドレスとかも、そんな感じね。よかったわ! 首飾り、大切にするわね」  私がにっこり笑いかけると、ライモンドは私を両手で優しく抱きかかえた。  そして、いそいそと池のそばのベンチに移動して腰をかけ、膝の上に私を乗せた。 「ねえ、昨日撫でてくれたお返しに、今日は僕が撫でてあげてもいいかな?」 「……いいかなって、もう撫でてるじゃないの」  私の答えを聞く前に、ちゃっかり撫で始めている。ライモンドの温かい手が、私の頭や首や背中を優しい手つきで撫でる。そのうち、肉球までプニプニしてきたが、それも仕方ない。人はモフモフとプニプニの魅力に抗うことなどできないのだ。  温かい日差しの中で優しく撫でられ、私はほとんど眠りかけていた。 「気持ち良すぎて、もうダメ……。おやすみなさい……」  夢うつつになりながら、そう呟くと、頭の上に何かが触れて、チュッと音が聞こえた気がした。 「……おやすみなさい」  ライモンドの優しい声が聞こえ、私はすっかり安心して眠りについたのだった。
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