5 地下への明かり

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5 地下への明かり

その後、私は魚介のスープやビーフシチューを食べたり、アイススケート場で遊んだりして、楽しい楽しいひと時を過ごした。 全てが夢のようで、風邪を引くから、と心配するシャンベルゼ様に帰りたく無いとゴネたりもした。 「また、連れて来てあげますから。」 「本当に!?」 「えぇ、ですから、その… 手を… そろそろ離してくれませんか…?」 そう言われてがっしりと握っていた手を見る。 私は赤くなってすぐに手を離した。 その頃から、私は気づいてしまった。 シャンベルゼ様の事を段々と好きになっている事に… しかし、シャンベルゼ様は私に触れようともしなかった。 キスも無ければ、それ以上の事など当然無く… 私はその夜シャンベルゼ様に思い切ってくっついてみた。 「何をやってるんですか?」 「何って… だって私たち夫婦ですもの。 こうするのが普通でしょう?」 私は言うが… 「やめてください! そんな気分じゃ無いんです!」 私の手は引き離され、そして、シャンベルゼ様はベッドから出て行ってしまわれた… 私は1人涙をこぼした。 やっと見つけた最愛の人。 なのに、私には触れてもくれない。 そして、いつか殺されるのならば… いっそ… そこまで思った。 シャンベルゼ様はその夜12時を回っても戻っては来なかった。 私は意を決してシャンベルゼ様に全てを話しに行こうと決めた。 そして、城中の部屋を探して回るけれど、シャンベルゼ様は居ない。 どこに行ったのか?と、半ば諦めかけた時… 地下に通じる階段に灯りが灯っていた。 私は階段をゆっくりと降りていく。 そして、最後まで降り切るとそこには… 氷の像があった。 全て女性で、24体ある。 24…? そういえばシャンベルゼ様の奥様は24人… 私はゾッとした。 しかし… 「私の美しい妻たちよ… 聞いてください… 今日ね、ローラに迫られてしまいましたよ。 でも、私はそれを跳ね除けました。 だって、そうするしか無いでしょう? あなた達の二の舞にはさせたく無いのです。 私は… 25番目の妻・ローラを… 愛しています…」 そして、シャンベルゼ様は氷の像にもたれ掛かって泣いていた。 「シャン…ベルゼ…様…?」 私はつい彼の名前を呼んだ。 「ローラ…!? なぜここに…!?」 「あの、明かりが付いていたから、降りて来たら… あの、その、今の本当ですの? その、愛してるって…?」 「おバカな子ですね。 私があなたを愛さないはずはないでしょう。 そして、私はこの24人の妻たちもまだ愛しています。」 「教えてください。 なぜ、ここに奥様たちの氷像が?」 私は尋ねた。
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