6 二人の理由

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6 二人の理由

「ここは、彼女達の墓場ですよ。 みな、美しいけれど、当然死んでいます。 最初の花嫁はジータ。 彼女の瞳は深い青で、海を思わせるおおらかな人でした。」 シャンベルゼ様は話し始める。 「だけど、嫁いだ次の日にベッドで凍死していました。 2番目の妻はカナリア。 美しい歌声の持ち主でした。 だけど、私と口付けを交わして帰らぬ人に… 3番目の妻は…マリア… 彼女も私が触れると心臓が止まりました… わかったでしょう? あなたを愛しているから、私はあなただけは抱けないのです。 キスも愛撫さえも… ローラ、それでも私と一緒にいますか? 愛の言葉しか囁けぬ私と?」 シャンベルゼ様はおっしゃった。 私はそんなシャンベルゼ様にそっと口付けた。 「っ…! ローラ! あなたまで凍りついてしまいますよ! 聞いていましたか!? 私の話を!?」 「シャンベルゼ様、私は大丈夫ですわ。 何故なら私もなんですの。」 「母殺し…? どう言う意味ですか?」 「私はここに来て一度も寒いと感じた事はありません。 何故なら、私が強い炎の力をこの身に宿しているからです。 その炎の力で、産まれた時に母親を焼き殺しました。 それで、母殺し、と… だからね、きっと私を抱いても、私は死にませんわ。」 「なるほど。 あなたが今まで平気だったのは、炎の力のおかげだと。 でも、抱くのは… 今までにキスは大丈夫でも、私が抱いて無事だった人は居ません。」 シャンベルゼ様はおっしゃった。 「私の炎の力を信じてくださいませんの?」 「私の氷の力が勝るでしょう。」 「やってみなければ分かりませんわよ。 もしも、抱かれて凍死しても、私は本望です。」 私がそう言うと、シャンベルゼ様は責めるような口調でこう言った。 「みんな、今までの妻たちもそう言いました。 そして、次の日私は冷たい死体を抱く事になるのです。 もう、嫌なんです… ローラ… 私を1人にしないで下さい…」 そう言うシャンベルゼ様を私は抱きしめた。 そして、部屋に戻り私たちは深い深いキスをした。 「寒くはありませんか?」 「いいえ、炎が渦巻いているようですわ。」 私は答えた。 そして、その日、私とシャンベルゼ様は結ばれたのだった。 炎を氷が溶け合う中で、永遠に… 3年後、私たちによく似た女の子がシャンベルゼ様と私に手を繋がれて歩いていた。 ハッピーエンド♡♡♡
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