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「ただいま」
彼が帰ってきた。私は一人になると気が気じゃない。
まずテレビはつけない。覗きに来るから。本も読まない。覗きに来るから。スマホも見ない。覗きに来るから。料理もしない。覗きに来るから。じっといい子にして彼氏を待ってる。
「お帰りっっ…てっ!?」
全身に寒気っっ! なになになに? 今度は何を連れてきたっっ! 全身鳥肌全開モード。私を恐怖死させる気かっ!?
彼は猫を抱えてきた。それもでっかい太った猫。いや、なんだか雨に濡れてて可愛そうだからって、そのセリフが似合うのは普通、子猫だろっ? お前は一度私と代われ! 正面衝突して入れ替われ! 私の思いを体験しろっっ! 分かるから!
猫は嫌いじゃない。むしろ好きだ。大好きだっっ。だけどこれはなし。なしだって。太ってるからじゃない! これは違う違うっっ! 猫の名を借りた何物かだっ。口回りはなんだ? あれは……血か? 血が滴ってるのか? 爪と牙が異様に尖ってる。あんなの漫画でしか見たことない! 尻尾が割れてる。ほぼ二本だっっ! 二本尻尾の生えてる猫見たことあるか? お前。なんでこれ拾ってくる! お前は絶対隣の回しもんだろ? 絶対グルだろ? 絶対、私を生け贄にしようとしてるだろっっ?
猫の目がキラッと光る。滴る血の口元が怖すぎる!! こっち見てるこっち見てる! 目を逸らす。ってなんであんたまで覗いてんのよ!! 後ろからお前まで私を見るなっっっ!
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