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「あら? 取り乱してごめんなさい」
「はい? そちらさまは……」
もう敬語だ。あの猫らしき物体にも敬語だ。私は今宵、晩餐の食卓に並ぶのだっっ!!
「あれ。猫だろ?」
「お前は分かってわざと合いの手を入れてるのかっっ?」
──こっちはコントやってんじゃないんだよっっ!? 食卓に並ぶかどうかの瀬戸際なんだよっ……命がけなんだよっ──
「この猫、ボンって言うの……私があの部屋に住み着いちゃった時に生き別れになっちゃったの。あの部屋に呪縛されて住んでたとこに帰れなくなって………もう何十年も前の話だから死んじゃったと思った、もう会えないと思った……」
「そうですかぁ……良かったですね……」
──涙、涙の……じゃぁぁなあぁぁぁい!! 何十年も前? それってもう化け猫じゃないですかっ! 目とか牙とか爪とかもう猫じゃないですっっ。口元から血を滴らせて……尻尾二本ある時点で猫又、化け猫ですぅぅっ! ──
「ねぇ、飼っていい? ここで……」
「へぇ? ……そ、それは私、一人じゃ決められないので……」
「彼氏さんに聞いてみてよ」
聞けって!? 聞けって!? 聞かなくてもこっちは分かるんだよっっ! こいつがあれを連れて来たってことはもうそうなんだよ! でも念のために可愛らしく……
「ねぇ、あの猫(便宜上……絶対こいつには可愛い猫にしか見えてない)飼うの?」
「うん。飼うよ!! 猫好きだろ? あんなかわいい猫がいたら二人幸せホルモン全開じゃん。お前も、もうメロメロの顔じゃん!」
「だそうです……」
──もう疲れた。お前の気を惹こうとブッたの無意味だった。私はぜったいあの血の滴る口で襲われるっ……今晩のディナーは私だろう……。先にこいつを差し出しますけど、なんか、文句ありますかっっ!?──
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