恐怖よ……こんばんわ

4/6
前へ
/6ページ
次へ
「あら? 取り乱してごめんなさい」 「はい? そちらさまは……」  もう敬語だ。あの猫らしき物体にも敬語だ。私は今宵、晩餐の食卓に並ぶのだっっ!! 「あれ。猫だろ?」 「お前は分かってわざと合いの手を入れてるのかっっ?」    ──こっちはコントやってんじゃないんだよっっ!? 食卓に並ぶかどうかの瀬戸際なんだよっ……命がけなんだよっ── 「この猫、ボンって言うの……私があの部屋に住み着いちゃった時に生き別れになっちゃったの。あの部屋に呪縛されて住んでたとこに帰れなくなって………もう何十年も前の話だから死んじゃったと思った、もう会えないと思った……」 「そうですかぁ……良かったですね……」  ──涙、涙の……じゃぁぁなあぁぁぁい!! 何十年も前? それってもう化け猫じゃないですかっ! 目とか牙とか爪とかもう猫じゃないですっっ。口元から血を滴らせて……尻尾二本ある時点で猫又、化け猫ですぅぅっ! ── 「ねぇ、飼っていい? ここで……」 「へぇ? ……そ、それは私、一人じゃ決められないので……」 「彼氏さんに聞いてみてよ」  聞けって!? 聞けって!? 聞かなくてもこっちは分かるんだよっっ! こいつがあれを連れて来たってことはもうそうなんだよ! でも念のために可愛らしく…… 「ねぇ、あの猫(便宜上……絶対こいつには可愛い猫にしか見えてない)飼うの?」 「うん。飼うよ!! 猫好きだろ? あんなかわいい猫がいたら二人幸せホルモン全開じゃん。お前も、もうメロメロの顔じゃん!」 「だそうです……」    ──もう疲れた。お前の気を惹こうとブッたの無意味だった。私はぜったいあの血の滴る口で襲われるっ……今晩のディナーは私だろう……。先にこいつを差し出しますけど、なんか、文句ありますかっっ!?──
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加