第一章 夢と現

1/3
前へ
/3ページ
次へ

第一章 夢と現

 子供の頃から何度も同じ夢を見る。  袴を着た男性が走っていく。その背に向かって私は何かを叫ぶのだ。すると男性はゆっくりと振り向く。口元しか見えないその人は、諦めたような顔で笑うのだ。  私は立ち上がって、彼の腕をつかもうとする。でも、かれがその手の甲を手のひらで包む。  私は静かに泣きながら、ゆっくりと笑顔を作る。 彼は何か言うと、私に背を向けてしまう。  場面は暗転し、私は腕の中にあの男性を抱えている。 大声で泣き叫ぶ私の頭を男性は撫でる。が、その腕がスルリと落ちたとき、目覚めるのだ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加