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その夢を見たあとは、決まって頭が痛くなる。
「お嬢様!雪様!」
ゆさゆさと体を揺らされた。
目をこすりながら開ける。
眼の前には不安そうな顔をした薫さんがいた。
薫さんはお手伝いさん。初老の如何にもばあや、と言った優しい人だ。そして、私のことを虐げない数少ない奇特な人の一人。
「うなされておりましたよ。」
眉を下げて心配そうに聞いてくれる薫さんに泣きそうになる。
あんな事をした私をまだ慕ってくれるなんて。
「菫が朝食を用意しております。ご用意ができたら今までお越しくださいな。」
ニコニコと笑う薫さん。
彼女が部屋を出ていくと私はため息を付いた。
私のせいで彼女達___薫さんと菫さんは双子で住み込みで私の世話をしてくれているのだが___は本家から半ば強制的に追い出された。そしてここ、東京都心の小さいが立派な日本家屋の中に閉じ込められるような状態になった。
____私一人だったら。
そう何度思ったことだろう。
そうであればどんなに気楽だっただろう。
着替え終わると、鏡の前に座る。
長い髪を緩くポニーテールし、右肩に流す。
カーテンを見た。いつもどおりの優しい風が吹いていた。
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