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ナーコがのびをしたならば
「うおおおお、やったじゃん繋、今年は同じクラスじゃーん!」
「痛い痛い痛い痛い!相変わらず容赦ねえ!」
「ははははははは」
友人の乱麻とそんな話をしたのは、四月、クラス発表の場でのことだった。
今年から、俺も乱麻も五年生になる。乱麻とは二年生の時に同じクラスになったっきり、三年と四年では別々になってしまっていた。この学校は四クラスしかないので、同じクラスになれる確率もそれなりにあるはずだったのだが。
見れば、今年はどことなく見覚えのある名前が多い気がする。男子も女子も、一年生から四年生までの間で一緒になったことがある子が半分以上を占めているような。まあ、クラス替えにはいろいろと大人の事情があるのだろうし、同じクラスになりやすい生徒となりにくい生徒というのはどうしてもいるのだろう。
「すげえ。クラスの半分は知ってるぞ、俺」
思わず、貼りだされた用紙を見て呟いた。
「クラス替えの時の新鮮味がないから、よそのクラスの奴とはなるべーく仲良くし過ぎないようにしてるんだけどさ。それでも……うん。半分近くは一緒になったことがあるな。坂巻とか高津とか斎藤のあたりは別のクラスだけどクラブが一緒でよく喋ったし」
「さすが、繋は友達が多いなあ。僕みたいなコミュ障はとてつもなく羨ましいぞ。マジで友達百人計画達成できるんじゃん?」
「はははははは、そんな話もしたっけ」
クラス発表の場では、どうしても生徒たちがざわざわするものだ。他の五年生の子供達も、自分のクラス表の前で“~と一緒になれた、なれなかった”とわいのわいのと騒いでいる。
ふと、俺は一覧表を見てある名前に目を止めた。
岸間翠。
見覚えがない、ということは少なくとも俺と同じクラスになったことはないのだろうが。
「なあ、乱麻。岸間翠ってやつ、知ってる?」
「あー」
俺の問いに、彼はつい、と体育館の隅を指さした。ちなみに、クラス表が貼りだされるのは毎年体育館と決まっているのである。
彼が指さした先には、一人の少女がいた。ボブカットの、小柄な女の子だ。ピンク色のカチューシャがキラキラしている。
ただ妙に――漂う雰囲気が、暗い。誰とも話さず、ただぼんやりとクラス表を見つめているだけのような。
「去年、隣のクラスに転校してきたやつ。僕、友達から話聞いてたから知ってるんだけど」
乱麻は声を潜めて言ったのだった。
「岸間さん、転校早々“失敗”しちゃったみたいで。クラスから浮いちゃって、孤立しちゃって……それで、まあ、あんなかんじなんだって」
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