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「何でって……」
前世でも散々聞かれた言葉だ。
『何でブランが好きなの?』
惚れてしまったんだから仕方ないじゃない。
命をかけて、王子を守るその使命感。にもかかわらず、ちょっと気だるげで優しいオーラが出ている。
本音を見せず飄々としながらも、戦闘となれば強くたくましく、大国を、そして王子を守るその強かさは恰好いいとしか言いようがない。
もちろんそんなところも大好きなポイントではあるのだが、私の推しポイントは、何より黒い肌に似合うあの素晴らしい――
「…………筋肉」
「……………………はい?」
長めの静寂の後、マリーはそれだけ言った。
分かってる。
分かってるさ!
こんなこと言ったら、引かれるだろうことは!
でも――
「レオンの金髪蒼眼がいいって人がいるんだから、ブラン様の筋肉がいいって思うのだって変じゃないでしょっ!」
「……そ、そうですね」
思わず前のめりになっていたらしい。
マリーは若干顔を引きつらせ、私の肩をそっと押し返した。
「ご、ごめんなさい、つい……」
「いえ、私も気持ちは分かりますから……」
マリーは目を伏せ、そう言った。
「マリーの推しは……レオン?」
訊ねれば、マリーは頬を染めながらコクリと頷く。
「そっか。……ハッピーエンドが約束されていて、羨ましい」
「……何だか、ごめんなさい。私だけ……」
マリーは悲痛な面持ちで、こちらを向いた。
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