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「ようこそ、我がヴィルコーン王国の誇る王立学校へ。リベルテ王国のガブリエル王子、よくぞお越し下さいました」
「レオンくん、そんな堅苦しいのはいいからさぁ、早く紹介してよ。その子」
リベルテ王国の王子だと言う彼は、その立場にも関わらずヘラヘラとした態度で、王太子を『くん』付け呼びした。
けれど、私は彼のことなど目に入っていなかった。剽軽な王子の隣に立つ、屈強な鎧の男に見惚れてしまったのだ。
「ブラン、様……?」
同時に、どこか見覚えのある彼。思わず口から飛び出したその名を呟いた途端に、どっと記憶の渦が脳内に流れ込む。
驚き目を見開く。けれど、レオンは私の腰を抱き寄せた。
「私の可愛い婚約者、エレーナ=ヴェルナーだよ」
甘く響く自分の名前も、今は耳に入らない。
ぼうっとしていると、ガブリエル王子が私の前にひざまずき、右手の甲に口付けた。
「よろしくね、レオンくんの婚約者ちゃん」
けれど、私はまだ目の前のブランを見つめていた。
「私の婚約者だ。近づかないでくれるかな?」
「おお、レオンくんの独占欲こっわ!」
2人の会話をどこか遠くに聞きながら、私は頭の中で必死に記憶を手繰り寄せた。
――待って、この世界って……私がハマってた、乙女ゲームの世界じゃない!?
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