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「エレーナ、いくら隣国の王子だからって、彼も男だ。隙を見せてはいけないよ?」
レオンがより強く私の腰を抱き寄せる。
ガブリエル王子がヘラヘラ笑って「熱いね〜」と冷やかす。
「……エレーナ?」
急にレオンのどアップが視界いっぱいに広がる。それで、ハッと我に返った。
「具合が悪いなら、無理はしないで? 救護室へ行こうか」
レオンが私の膝裏に手をかけ、そのまま持ち上げる。
「ちょっとちょっと、俺は〜?」
ガブリエル王子の声が聞こえる。
「わ、私なら大丈夫ですから! レオン様、救護室までなら一人で……」
「それはいけないよ。君は私の大切な婚約者なんだから」
「で、でも……」
横抱きにされたまま紡がれる言葉は、いつもなら胸が跳ねるところだ。
けれど、自分があのゲームの中の人物だと気づいてしまった今、焦りと恥ずかしさと推しじゃない彼に抱かれているという申し訳無さがないまぜになる。
私は混乱していた。
「ならさー、その婚約者ちゃんはブランに任せなよ。ね、ブランなら安心っ!」
ガブリエル王子のその発言に、緊張が一気に高まった。
ムリムリムリムリ、推しに近づくなんて!
そう思ったのに、レオンに抱かれたままの私は動くこともできない。じっとしていると、視界にブラン様が入ってくる。
「いいかい、護衛殿。私の可愛い婚約者に手を出したらどうなるか……」
「安心してください、王太子殿下。貴方様の婚約者様です。手を出すなんて万が一、いや億が一にもありません」
その言葉に若干傷つきながらも、私はストンとブラン様の腕の中に降ろされる。
胸が高鳴りすぎて、爆発しそうだ。
火照った身体には、彼のまとう鎧の金属がひんやりと気持ちよかった。
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