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正ヒロインと悪役令嬢
「救護室はこちらでよろしいですか、未来のプリンセス」
抱かれたまま、心臓をバクバクさせたままコクリと頷くと、ブラン様がガラガラとその引き戸を開ける。
「おや、先客がいたようで」
救護室の隅の丸椅子に腰掛け、窓辺に頬杖をつく女生徒。彼女は転入生のマリーだ。
――ってことは、彼女こそ正ヒロイン! どうりで……。
彼女の悪い噂を聞いた時、何故こんなに素直そうな子が、と思ったものだ。
彼女を陥れようとしている、彼女の継母のせいだったのだと今なら分かる。
「お嬢ちゃん、失礼するよ。未来のプリンセスが具合が悪いってんで、ベッドに寝かせてやくれないか?」
ブラン様が私を気遣ってくださっているのは天にも昇る心地なのに、話しかけられているのが自分ではないという事実に胸がモヤモヤする。
「はい、勿論です。あなたは――?」
「俺はブラン。リベルテのちゃらんぽらん王子の護衛で来たんだが、そのちゃらんぽらんに頼まれちまってよ〜」
ちゃらんぽらん、の言葉にくすっと笑ったのは、私だけでは無かった。
「でしたら、早く王子の元に戻って差し上げてください。彼女のことは私が診ます」
「ああ、助かるよ」
ブラン様はそう言うと、私をそっとベッドに下ろし寝かせてくれた。見上げた顔は無愛想だったが、それがまた恰好いい。
思わず見つめてしまったが、ブラン様は何もなかったかのように行ってしまった。
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