雨天順延

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 高田君は、あやめさんの隣のクラスである一年B組の、同じく環美委員だ。  町野さんというのはあやめさんの幼馴染で、彼女も同じく一年B組の環美委員だった。  町野紬さんは、あやめさんよりもっとしっかりしていて、環美委員が不人気という情報は、事前に手に入れていた。委員会決めの時期に彼女が無事なら、きっとあやめさんもそのことを知ることが出来たに違いない。  ただ生憎、紬さんはその頃コロナに感染し、一週間学校を休んだ。  結果、幼馴染同士、二人で仲良く環美委員となってしまったのである。  そして、高田君はというと。  委員会の初顔合わせの時、あやめさんは紬さんと話していた。 『ごめん、あやめに言っとけば良かった!あやめ、環美って大変だって、知らなかったでしょ』 『いいんだよ、大変ったって、他と比べればってことだし。紬と一緒なら心強いよ』 『あやめ!あんたってやっぱりいいヤツー!あたしもあやめと一緒ならやっていけるよ!』  そんなことをワイワイ言っていたと記憶している。  そうやってあやめさんと紬さんが仲良くしていたので、何となくあやめさんのクラスの男子と、紬さんのクラスの男子である高田君も輪に加わって、雑談に花が咲いていた。 『俺アミダで負けたんだよー』  あやめさんのクラスの男子――多分加藤君だったと思う。佐藤君だったかもしれない。何しろあれ以来委員会に来たことが無いので、あやめさんは失礼ながら忘れてしまった――が大げさに嘆いた。  周囲の他の一年生も、男女問わず、大概アミダやじゃんけんに敗れて来た、敗者だ。  一方、あやめさんはうっかりしていて、紬さんは病に倒れて、結果的にここにいる。 『じゃあ、高田君は何に敗れたの?じゃんけん?アミダ?』 何気なく、あやめさんは聞いた。 『え、や、俺は……』 『あやめ、高田君は、自分からやるって言ったんだってよ』  紬さんが、横から言った。 『え、マジ?ヤマセンのこと知らなかったとか?』  それを聞いて、加藤君だか佐藤君が、驚いてた。 『そうじゃなくて、高田君は、このままじゃHRが終わらないからって、漢気で引き受けたんだよ!』 『え、あ、そうだったんだ。ごめん、てっきり』  そんな立派な人を敗者扱いしてしまったことに、あやめさんは慌てた。 『いいって、大したことじゃないし』  そう言って、高田君は、ニッコリ笑った。  そしてあやめさんは、自分でもびっくりするくらい、赤面してしまったのだ。 『へえ、やるじゃーん、漢じゃん!』  加藤君か佐藤君が、そう言いながら高田君の背中をバンバン叩いていたのを、あやめさんは、顔を赤くして大いに汗をかきながら、ぼんやり見ていたのだった。
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