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「朝はあんなに晴れてたのに、雨すごいね」
高田君は、外を眺めながら感心したように言っていた。
「天気予報でも、一日晴れって言ってたんだけどさ。俺、もう今日こそ、ヤだけどやっちゃおうってつもりでいたのに」
「そうなんだ」
さすが、漢気の高田君だ。
「永塚さんも、やる気満々だったんじゃん」
高田君は、あやめさんの草取り道具を指して少し笑った。
「道具なんて、ヤマセンが貸してくれるから、持ってこないヤツのが多いみたいだよ」
「そうだったのか……」
自分だけ除草作業に張り切っているようで、あやめさんは恥ずかしくなり、またちょっと顔を赤くした。
そんなあやめさんを見て、また高田君が笑った。
「あやめえええ!」
昇降口に、紬さんの大声が響いた。
「やっぱりいた!ほら高田君、あやめいたでしょ」
あやめさんが律儀に集合場所にいるという予想が当たったことがそんなに嬉しいのか、紬さんは高田君にドヤ顔だ。
「あーはいはい、町野さんの言う通りだったね」
「何だよその棒読み。それより、もうヤマセン来る頃かな。こんな雨じゃ自転車で帰れないよ」
紬さんは大げさに溜息をついた。
「あやめもこれじゃバスでしょ?一緒に帰ろ!」
「うん」
まもなく、ヤマセンが出現し、来週の今日また集合!と宣言して、今回の除草作業も解散となった。
中学校の頃は周囲にファストフード店なんか無く、珍しさもあって、あやめさんも紬さんも、高校入学後は学校帰りに隙あらばハンバーガー店に通っている。
今日もバスの時間待ち――何しろ地方なので、バスの運行自体が少ないのだ――という口実で、二人はお店の一角に陣取った。
「それにしても、こういうの久しぶりだねー」
「え、一昨日もここ来たばっかじゃん」
あやめさんが目をぱちくりしてそう言ったので、紬さんが笑った。
「そういうことじゃないって。あやめ、雨女じゃん、それも強力な!」
「……いや、それについては本当に、申し訳なかったっていうか」
そう、あやめさんは、小さい頃から雨女だった。
楽しみにしていた家族旅行。遠足。社会科見学。林間学校。修学旅行。
そういったものをことごとく雨にしてきた雨女強者だ。
そして家族以外でその最大の被害者は、幼稚園からずっと一緒の幼馴染、紬さんということになる。
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