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「でも、それは昔のことっていうか」
「そうかなあ?どんな天気予報も覆す、雨女の中の雨女。そう簡単に治るかなあ?」
「それにっ、楽しみにしてることほど雨が降るってことだったじゃん」
「そうかなあ?あやめは除草作業、楽しみにしてないのかなあ?」
紬さんは、ニヤニヤしながらあやめさんを見ている。
「え、だって、草取りだし」
何故かあやめさんは、紬さんの顔を真っ直ぐ見られない。
「環美の行事だし。雨天順延だし」
「あ、高田君!」
急に言われて、あやめさんは焦って振り向いた。
「……ごめん、ウソ」
「えええええ、ちょっと、紬!」
どうして私はこんなに赤くなっちゃってるんだろう。
なんで私、こんなに焦ってるんだろう。
アワアワしてるあやめさんを、紬さんは楽しそうに眺めている。
「どうだ?あやめ、楽しみにしてると認めるか?環美の除草作業を!」
「…………」
「あ、高田君!」
「二度目は引っかからないって!」
あやめさんはそう強気で言い返したが、その時後ろから声を掛けられた。
「永塚さん、町野さん、ここにいたんだ」
その声は、間違いない。高田君だ。
瞬間、あやめさんの赤面と外の雨が、一気に強まった。
次の週の除草作業は、やっぱり雨だった。
というか、大変な豪雨だった。
あやめさんはとうとう、その除草作業をとても楽しみにしていると、自分に認めてしまったのだ。
だって、高田君に会えるから。
さすがのヤマセンも事前に校内放送で中止をアナウンスしたくらいだ。度重なる順延を経て、除草作業は、ヤマセンとPTAでやることにしたそうだ。
そしてさすがヤマセン、環美委員をタダで解放するはずもなく、後日、環美で応接室の床のワックスがけをすることになった。
きっとその日も大した雨になるだろう。
室内作業なので、雨天順延とはならないけれど。
<了>
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