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「ふははは!!この女を助けてほしかったら、我らにひざまづけ、クロウラー‼」
「きゃー、助けて~!!」
中央広場はイベント会場を中心に扇形になっており、ヒーローショーの舞台を中心として、扇状に白いプラスチック製の椅子が並べられ、道の端に屋台が並んでいる。クロウラーのヒーローショーは、なかなか盛況していて、家族連れの子どもや、特撮ファンらしきカメラを持った男性などでにぎわっていた。
カラスの格好の全身黒タイツで覆われたカラス団が、白いブラウスを着たりつこお姉さんを羽交い絞めにしている。
「みんな、クロウラーって名前を呼んで!せーの!」
りつこお姉さんの掛け声に合わせ、子どもがちらほらと名前を呼ぶ。りつこお姉さんが襲われそうになったとき、激しいギターの音色に合わせて、舞台袖から漆黒のヒーローが姿をあわらした。子どもの声援が上がり、母親たちもクロウラーのがたいの良さに顔を見合わせて驚いている。
「(わあ、かっこいい…)」
丸山は思わず屋台のそばに立ち尽くし、ヒーローショーに見入った。190センチの長身から繰り出される回し蹴りに、素早い拳。相手と組みあえば、その迫力にカラス団は恐れをなす。
「(はあ…あんな体格のいいひとにお姫さまだっこでもされてみたいなあ)」
丸山はクロウラーの姿を熱っぽいまなざしでみつめる。実は、丸山は個人アカウントでクロウラーのSNSもフォローするほど、クロウラーにはまりつつあるのだった。
「くそ!覚えてろ!」
カラス団は捨て台詞を吐くと、りつこお姉さんを解放し、逃げていった。
「ありがとう、クロウラー!」
クロウラーは親指を立てると、客席ににっこりと笑いかけた。拍手がおこり、りつこお姉さんが子どもたちに呼びかける。
「はーい、クロウラーと写真撮りたい人、いるかな?みんなこっちに来てー」
丸山はほっと、息をつくと、屋台の方を眺め、歩き出す。そのとき、帽子を深くかぶった男と肩がぶつかった。
「あ、ごめんなさ…」
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