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丸山は返事もしないまま、立ち尽くしている。黒谷は大丈夫かな、と思いながら照井と一緒に本部の方へ向かった。
「(クロウラー、今日も来てるんだ。あぁ…会いたいな。中の人に会いたい。連絡先交換してくれないかな)」
丸山はぼんやりとしながら、マルシェの店の前に立っていた。このところ、何をしていても考えるのはクロウラーのことばかりで、自分でも行き過ぎているとは思いながらも心が惹かれるのを止められないのだ。イベントや握手会で姿を見るたびに、想いがつのっていくばかりで、ついに仕事にまで支障をきたすレベルになってしまった。照井や猪熊にもそれとなく注意されてしまっている。
「(私、ちょっと変なのかな)」
そのとき、足元に子どもがぶつかってきた。丸山はぼんやりとしていたため、その子どものこともただ見送っている。
「あっち、いってみよーぜ!」
「俺、海入りたい!」
と叫ぶ子どもの声を聞きながら、丸山は
「(子供は悩みがなさそうでいいな)」
と景色を眺めていた。そのとき、目の前をカラスのシールを車体に貼り付けたバンが通り過ぎた。バンは、100メートルほど先の本部の近くにある駐車場へと入っていった。
「(あれ、クロウラーの乗ってるバンだ!い、いまなら会えるかもしれない!)」
丸山は勢いよく走り出すと、バンの方へ向かっていった。
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