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丸山は浜辺に立ち尽くし、全身の血流が逆流するかのような感覚に襲われた。
沖のほうで溺れている子供は、さっき丸山がぶつかった子供だったのだ。ひとりは浜辺でおじさんに介抱されているが、もう一人は今にも沈みそうに口を開け、苦しそうにしぶきをあげながらもがいている。
「(わ、私があのときちゃんと見てなかったから…)」
「俺は危ないからやめようって言ったのに、あいつが沖の方へ行こうって…」
と介抱されている子どもが呟いた。
3人はなにか浮き輪のようなものがないかあたりを探したが、そうこうしていると子どもの命が危ない。
丸山はハイヒールを脱ぐと、海に向かって走り出した。
「丸山⁉あ、危ないわよ!!」
「あの子が溺れたのは私のせいなんです!だから、行かなきゃ!」
丸山は海の中へ飛び込み、沖の方へ向かって泳ぎだした。騒ぎを聞きつけたクロウラーのスーツを着た黒谷と、照井もやってきた。黒谷が身動きできないまま様子を見ていると、丸山はなんとか泳ぎ切って、沖にいる子どもを抱きかかえた。だが、子どもは水を飲んでしまったのか、みるみるうちに沈んでいく。女性の力では子供を支えきれず、丸山も引きずられるように海中に飲み込まれていった。
「ああ、丸山さん!」
照井と猪熊、船岡は掴まれるものがないか探し回る。それを見た黒谷はヘルメットを勢いよく浜辺にたたきつけると、スーツのまま熱い砂を蹴り上げ、海へと駆け出して行った。
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