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海の中は、暗く、光がどんどんと遠ざかっていく。
「(私、死ぬのかな)」
丸山は溺れながらもしっかりと子どもを掴んでいる。空気のない海中では息ができず、丸山は自分の死を覚悟した。
「(みんなに迷惑かけたまま死んじゃうなんて、私って馬鹿だな)」
「(ああ、最後にクロウラーに逢いたかった…)」
全身の力が抜けていくのを感じたとき、丸山の視界に真っ黒い影が差した。こちらへ向かって潜ってくる怖い顔はよりいっそう険しく、黒いプロテクターの全身は丸山の目にきらきらと輝いていて見えた。その姿を見たとたん、丸山は自分が安堵するのを感じていた。
「(黒谷くん…?)」
黒い腕は丸山と子どもを抱きかかえると、海面へと上昇していく。たくましい腕に抱かれながら、丸山の意識は遠ざかっていく。
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