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「おはよう、黒谷くん」
「町長!おはようございます」
別室には町長、千鳥 飛鳥(せんどり あすか)がソファーに座っていた。黒光りする日に焼けた肌は、烏川町の山登りで焼けたらしい。黒い肌と対照的に歯はホワイトニングされ、真っ白だ。お役所仕事をしているにも関わらず、健康的に鍛え上げられた筋肉を自慢としている。快活そうな笑顔を浮かべ、千鳥は黒谷と照井をソファに座るよう促した。
千鳥の横にはなにやら背の高い深紅のベールにくるまれた置物がある。
「もう春になる。2年目だね。仕事は慣れたかい?」
「はい。猪熊先輩も親切ですし」
「そうか、うんうん」
千鳥は、はっはっは、と白い歯を見せて笑う。
「さて、君に今日来てもらったのは、この春から始まる町おこしプロジェクトの話なんだ」
「ああ…、あれですね。今日パンフレットを運びました」
「うん、まだこの話は照井くんに言って内密にしてもらってるんだ」
千鳥はゆっくりと立ち上がると、ベールの前に歩み寄った。
「私は、この春から新しい町内祭り、新規ショッピングモールの誘致などを行う予定だ」
「なるほど」
黒谷が頷いたのを見て、千鳥が満足げな顔をする。
「そして、これだ」
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