甘いため息ーーイケないお兄さんは好きですか?2

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「ともかく一旦ここを離れよう。何か食べたい物はある? もしくは食べられそうな物」  お兄ちゃんは少し間を置き、諦めた風に肩を竦める。  子供の頃からの不貞腐れると唇を噛む癖が抜けず、このポーズをすれば和樹お兄ちゃん達が折れてくれるんだ。 「これといって特に……」 「それならファミレスでいい?」 「うん、ハンバーグ、グラタン、オムライスもあるね!」  出来るだけ幼く笑ってみる。上手に笑えただろうか。 「ハンバーグの上に目玉焼きが乗ってるやつ、あるかな。チーズが入ってるのもいいなぁ」  ーーねぇ、和樹お兄ちゃん。  子供舌と言った唇を眺め、心の中で問い掛ける。  ーーねぇ、お兄ちゃん。  この間、上司の娘さんとお見合いしたんだって、おばさんから聞いたよ。  先方は和樹お兄ちゃんをとっても気に入ったのに、お付き合いは始まらなかったみたいだね。 「ねぇ、お兄ちゃん」  ーー好きな人はいるの? 付き合っている人はいるの? 「ん?」  小首を傾げ、優しくこちらを覗き込む。通った鼻筋に聞いて確かめたい事柄が滑り落ちていく。 「なんでもない。荷物、取ってくる」  大袈裟に踵を返す。 (はぁ……)  本物の家族を失った今、和樹お兄ちゃんの妹ポジションまで手放せるほど心は強くない。吐いた息で長年抱えた気持ちを丸め込んで、誰より自分に認識させないようにする。  私は和樹お兄ちゃんの【妹】でいいんだ。
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