甘いため息ーーイケないお兄さんは好きですか?3

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「……じゃあ、可愛い子には優しくするって言ったのは覚えてる?」  言いながら隣へ並び、エコバッグの持ち手を1本ずつ握って重みを分け合う。 「覚えてるもなにも信条として掲げてる」 「だったら私に優しくしないで」 「どうして?」 「私は可愛くないから」  和樹お兄ちゃんは歩幅を合わせてくれる。でもピカピカに磨かれたビジネスシューズと汚れたスニーカーじゃ、同じ道を歩いていても行き着く先は違いそう。ギュッと唇を噛む。 「果穂ちゃんは可愛いよ」  やや間があって返された。 「果穂ちゃんは可愛い」  もう一度言う。 「今も明日も明後日も。果穂ちゃんは可愛いよ」  小指と小指がぶつかり、まるでこの先ずっと優しくすると約束されているみたい。 「毎回、俺の好物を作らなくてもいい。果穂ちゃんの手作り料理を好物にしよう」 「え?」 「サラダ、煮物、焼き魚とか。健康を気遣って用意してくれるなら、その気持ちが嬉しいーーただ」  ここで言葉を切り、溜める。私は視線を感じつつも顔を上げない。 「それはバイトの領域じゃないよね」  お兄ちゃんに頼まれたメニューを作り、帰宅を促す電話をする。これがバイトの条件。  例えば、おばさんならお兄ちゃんに栄養が偏らない食事を勧められるし、正樹は定時で帰って来てとお願いをきいて貰える。本物の家族だからだろう。 「ごめんなさい、お節介だったよね?」 「なんで果穂ちゃんが謝るの? 仕事熱心なのは良い事だ」
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