甘いため息ーーイケないお兄さんは好きですか?3

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「正樹に鍵を渡してないの?」 「何が悲しくて弟に合鍵を渡すの」 「とか言ってメールをマメに送り合ってない? あっ! サンドイッチごちそうさまでした」 「どういたしまして。残さず食べた?」 「完食した」 「よし。えらい、えらい」  私も携帯を確認するが正樹からのメッセージは無かった。その代わり瑠美のアイコンが表示されている。 【先輩にどうしても果穂を紹介してくれって頼まれて。果穂、やっぱり来れないよね?】 【先輩すごくイケメンで優しいの。あたしも果穂に紹介したいなぁ】  昼間に話した件、か。お兄ちゃんの気を引きたくて話題を持ち出したものの、不参加の意思は変わらない。 「はぁ」  ため息をついたのはーー和樹お兄ちゃんだった。 「お兄ちゃん?」 「内容、見えちゃった」  荷物を一緒に持っているので画面が視野に入っても仕方ない。 「瑠美って子、ミスコンの?」 「瑠美を知ってるの?」 「正樹が言ってた。彼女と仲良いんだ?」 「お父さん達が亡くなってからかな」 「派手そうな子だね?」 「確かに外見は華やかだけど、性格はしっかりしていて。私は瑠美を親友だと思ってる」  やりとりの途中で正樹がこちらに気付き、駆け寄ってきた。するとお兄ちゃんはエコバッグを彼へ押し付け、大股でエレベーターに向かう。 「あれ? 兄貴、機嫌悪い?」  尋ねられても直近の会話では思い当たる節がなく、首を振る。 「置いていくぞ!」  響く声に私と正樹は顔を見合わせ、触らぬ神になんとやら。慌ててお兄ちゃんの後を追った。
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