甘いため息ーーイケないお兄さんは好きですか?

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■ 「あら、寝不足?」  オレンジジュースを啜る私の肩を軽く叩き、瑠美が軽くウィンクする。あぁ、メイクが行き届いた表情が今日も眩しい。さすがは学園のマドンナ。 「寝不足というか」 「その様子だとバイトに行ってた? 電話するだけならアパートからすればいいのに。果穂は真面目だねぇ〜」 「だって電話するだけで1万円は貰えないって! 夕飯を作られても迷惑かもしれないけどさ」 「いやいや、迷惑なら合鍵なんて渡さないでしょ。和樹お兄ちゃんとやらは果穂の学費を出したくてバイトを持ち掛けたんだろうし。てか、素直に学費援助して貰えば? 昔からの付き合いって聞いたけど?」  瑠美は誰から聞いたとは言わず、カフェテリアで一際目立つ人物を顎で示す。女子に囲まれ、会話に花を咲かせるのは和樹お兄ちゃんの弟、正樹。 「はぁ、兄弟揃ってモテるんだから」  頬杖ついて嘆く。彼等は自慢の幼馴染である一方、苦労もさせられた。主に恋愛方面で。 「そういう果穂だって人気があるのよ。先輩等に飲み会に連れてきてって頼まれる。どう? そろそろ気晴らしに参加してみない?」  お誘いに私の眉が自然と下がってしまう。 「……ごめん、まだそういう気持ちにはなれなくて」 「いいの、いいの! そうだよね、うん! また誘う」 「ありがとう」  とっくに飲み干したオレンジジュースを含んだまま微笑む。大丈夫かな、上手に笑えただろうか。  両親を亡くした私に態度を変えたりせず接してくれ、瑠美には感謝している。
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