和樹Side2

1/3
前へ
/49ページ
次へ

和樹Side2

■ 「和樹さんですか?」  待ち合わせに指定されたコンビニへ着くなり、声を掛けられた。 「ーーあぁ、君が瑠美さん?」  店内に入らず駐車場で俺の到着を待っていたらしい。血の気が引いた顔立ちは泣き出す寸前。苛立ちをぶつけたくなるのを抑え、事情を聞き出す。 「それで果穂ちゃんは? 正樹の話によると君の友達の家に行ったんだよね?」 「は、はい。あの、弟さんから連絡して貰っちゃって、すいません。和樹さんへどうやって知らせたらいいのか分かんなくて」 「いや、そんな事はどうでもいい。君が友達の住所を知らないとしたら、誰に聞けば分かるかな?」 「それがその、弟さんにも言いましたが」  彼女は力なく首を横に振った。  昨夜から果穂ちゃんと連絡が取れなくなり、現在に至る。  トラブルに巻き込まれた果穂ちゃんを助けたくて、いちにもなく駆け付けたはいいが肝心の居場所を把握できない。  正樹も知っていそうな人物へ聞いて回るものの、有力な情報は得らず……。 「本当にごめんなさい、あたしが、あたしが果穂を!」 「少し待ってて」  俺はすばやく水を購入すると、彼女へ渡した。 「飲んで。いったん落ち着こうか」  悠長な事も言ってられない。しかし、彼女を責め立て泣かしたところで無意味だ。 「ゆっくり飲んだら深呼吸して」  とりあえず店先へ移動、怯え切った背中を撫でてみる。すると限界まで溜めていたであろう感情が溢れ出す。 「あたし、先輩に果穂を紹介しないとアナウンサーになれなくするって言われて。先輩の両親が芸能界と繋がってるから」 「自分勝手だな。果穂ちゃんは君を親友だと言ってたよ?」 「は、はい、あたしは、親友をーー自分の夢の為に売りました。果穂はあたしの為に先輩の部屋へついて行ったのに」
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

100人が本棚に入れています
本棚に追加