甘いため息ーーイケないお兄さんは好きですか?5

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「和樹お兄ちゃんがお金を出す義理はないよ」 「なんで? 苦労して入った大学を辞められたら家庭教師として残念だ。おじさんやおばさんも果穂ちゃんが卒業するのを望んでいるはず。俺の感じ方だと義理というより義務かも」 「……義務。そういうのは親類がするんじゃないかと」  視線をセレモニーホールへ流す。火葬中は故人等の話をしたり、食事をして待機をするのだが、親類は赤ら顔で両親の死を悼む様子を見せず、いたたまれなくなった私はこうして退出している訳で。 「俺は果穂ちゃんが大事、困っているのを見過ごせない。気にするのなら出世払いの名目で学費を立て替えてもいい」 「本当にお兄ちゃんは優しいね。普通、幼馴染にそこまでしないって」 「あのね、俺は真剣に言っている。一応、稼ぎはある。果穂ちゃんの学費だけでなく生活もサポートもしたいな」 「はは、気持ちは嬉しいけど、和樹お兄ちゃんにそこまでして貰う訳にはいかないよ」 「だから笑わないで。冗談なんて言ってないから」  親類よりよっぽど頼りになる、和樹お兄ちゃん。  私へ寄り添ってくれる、和樹お兄ちゃん。  まるで両親からバトンを手渡され、私の面倒を引き継ぐと言っているみたい。それは嬉しくあっても喜べない。 「果穂ちゃん、遠慮しないで俺を頼って欲しいな。こんな状況になれば誰でも支えが要るさ」 「でも、お兄ちゃんにだって自分の生活がある」 「ーーひょっとして母さんから聞いた?」 「和樹お兄ちゃんになかなかお嫁さんが来ないって寂しがってたよ。彼女はいるのか質問しても、特定の相手はいないと返されるとも」 「まぁ、みんな可愛いからね。残念ながら1人に決められないなぁ」
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