甘いため息ーーイケないお兄さんは好きですか?5

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「色々伝えたい事はあるの。心配かけてごめんなさい、仕事を中断させてごめんなさいーー助けてくれてありがとう」  一気に告げると涙もつられて出そうになる。噛み締めて堪え、頭を下げた。 「気にしなくていいよ。果穂ちゃんが無事ならそれでいいんだ。果穂ちゃんに万が一でもあれば、おじさんやおばさんに顔向け出来ない。あぁ、目元を擦るのは良くない」  ティシュを引き抜き、泣き顔を拭おうとする。私はその仕草を頭を振って拒む。 「果穂ちゃん?」 「嫌なの!」  テーブルへ両手を置いて乗り出した。 「嫌なの、もう」  繰り返す。  「えっーーあぁ、そっか、ごめん。触られたら嫌だよね」 「違う! 触るならちゃんと触って! 女性として扱ってよ! 泣き虫な妹を慰めるみたいしないで!」  1人の女性として見て貰いたいのに駄々をこねて、これじゃあ子供だ。けれど後には引けない、引かない。  和樹さんは仰け反り、瞬く。 「妹?」 「和樹さんにとって私は女性じゃないのは分かってる。私も妹でいいから側にいたいと振る舞った。でも、もう嫌なの!」  スーツの上着のボタンへ指をかける。 「わー! 待って、待って、果穂ちゃん」 「さっきみたく果穂って呼んで!」  和樹さんは脱がさまいと腕を伸ばして、時計に私の涙が張り付く。  どうか私と和樹さんの時間を進めてーーそう願う。  手首を掴まれたまま、間が生まれた。 「俺は……」  スゥッと和樹さんは沈黙を破る呼吸をする。 「俺は果穂ちゃんを妹だと思った事、一度もないよ」  もう片方の手で頬を撫でつつ、唇を掠めた。 「果穂ちゃんーー果穂が俺をお兄ちゃんって可愛く呼ぶから。君の理想を壊さないように優しく良い兄を演じていただけ」  和樹さんも両膝を立て、額と額をくっつけて語る。
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