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◇
結局、大和くんとふたりで帰路につき、家に帰り着いたわたしは早々に自室へ上がった。
どさ、とベッドに倒れ込むとマットレスが跳ねる。
「ふぅ……」
一日の出来事があまりに濃くて、まだ頭の中が混乱していた。
彼との再会という事実をやっと冷静に受け止められたいま、ますます思考や感情が絡みつく。
(本当にまた会えたんだ)
ようやく実感が湧いてきた。
置き去りになっていた気持ちが追いついてくる。
『あの約束、俺はいまでも本気だよ』
どくん、と射られたように心臓が高鳴る。
大和くんの存在が意識を満たしそうになったとき、不意にスマホが震えた。
「や、大和くん」
ちょうど彼からのメッセージだった。勢いよく起き上がる。
アカウントは別れ際、言われるがままに交換したのだ。
【今日は色々とありがとう、風ちゃん】
通知をタップし、トーク画面を開いた。
そうしてから、早すぎたかも、とわずかな後悔が押し寄せてきて慌てる。
【まだどこか夢みたいだけど、運命なら当然だよね】
こうして再会を果たしたことを指しているのだろう。
“偶然”とは言っていたけれど、運命を信じるならば必然だと言いたいみたいだ。
【また明日】
立て続けに届いたメッセージを丁寧に目で追って、何度も読み直す。
キーボードを開いたはいいものの、なんて返そうか迷って指が彷徨っていた。
【わたしも大和くんとまた会えて嬉しい】
無難に、でも正直に言葉を紡いで送る。
ちょっと気恥ずかしくなって「また明日ね」と急いで続けると画面を閉じた。
「…………」
ぼんやりと目の前の空を眺め、二度目のため息をつく。
ずっと忘れられなかった初恋。
彼はわたしの心の大部分を占めてきた。
(……でも、全然分からなかったな)
幼少期の記憶しかなくたって、たとえば街中で偶然すれ違っただけでも、すぐに気がつくと思っていた。
それこそ運命なら、第六感のようなものが働いて。
だけど、そんなことは決してなかった。
彼の名前を聞いて、そして彼がわたしの名前を呼んでくれても、まだ気づかなかったのだから。
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