第3話

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     ◇  結局、大和くんとふたりで帰路(きろ)につき、家に帰り着いたわたしは早々に自室へ上がった。  どさ、とベッドに倒れ込むとマットレスが跳ねる。 「ふぅ……」  一日の出来事があまりに濃くて、まだ頭の中が混乱していた。  彼との再会という事実をやっと冷静に受け止められたいま、ますます思考や感情が絡みつく。 (本当にまた会えたんだ)  ようやく実感が湧いてきた。  置き去りになっていた気持ちが追いついてくる。 『あの約束、俺はいまでも本気だよ』  どくん、と射られたように心臓が高鳴る。  大和くんの存在が意識を満たしそうになったとき、不意にスマホが震えた。 「や、大和くん」  ちょうど彼からのメッセージだった。勢いよく起き上がる。  アカウントは別れ際、言われるがままに交換したのだ。 【今日は色々とありがとう、風ちゃん】  通知をタップし、トーク画面を開いた。  そうしてから、早すぎたかも、とわずかな後悔が押し寄せてきて慌てる。 【まだどこか夢みたいだけど、運命なら当然だよね】  こうして再会を果たしたことを指しているのだろう。  “偶然”とは言っていたけれど、運命を信じるならば必然だと言いたいみたいだ。 【また明日】  立て続けに届いたメッセージを丁寧に目で追って、何度も読み直す。  キーボードを開いたはいいものの、なんて返そうか迷って指が彷徨っていた。 【わたしも大和くんとまた会えて嬉しい】  無難に、でも正直に言葉を紡いで送る。  ちょっと気恥ずかしくなって「また明日ね」と急いで続けると画面を閉じた。 「…………」  ぼんやりと目の前の(くう)を眺め、二度目のため息をつく。  ずっと忘れられなかった初恋。  彼はわたしの心の大部分を()めてきた。 (……でも、全然分からなかったな)  幼少期の記憶しかなくたって、たとえば街中で偶然すれ違っただけでも、すぐに気がつくと思っていた。  それこそ運命なら、第六感のようなものが働いて。  だけど、そんなことは決してなかった。  彼の名前を聞いて、そして彼がわたしの名前を呼んでくれても、まだ気づかなかったのだから。
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