退院

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30日、いよいよ退院、ナースさんによる、何時もの朝の検診を済ませる。 私の次に、Bさんの検診をしたナースさんに Bさんは「これ、捨てて頂戴」と、飲み終えたペットボトルを 6~7本持って帰らせる。 日曜日でも、祭日でも、毎朝必ず、患者が出したゴミを 持って行ってくれる、清掃員さんが居るのに、何で、その人に出さずに 空のペットボトルを、溜め込んでいたのか? それを、何でナースさんに、捨てさせるのか?最後までBさんの事は謎だった 朝食を食べ、洋服に着替えて、靴を履き、スリッパなども、荷物の中に入れる 9時半を過ぎた、ディルームへ行くと、もう娘が来て居る。 娘が持って来たカートを押して、病室へ戻り、大きなバックと 紙袋を、カートに積んで、また、ディルームへ行って 事務員さんが、会計書を持って来てくれるのを、待つ。 「お母さん、ここへ座ったら」と、娘が、自分が座っている椅子を勧める。 すると、近くに居た、いかにも人の良さそうな、小父さんが 「あ、これを使ったら?」と、娘に、椅子を持って来てくれた。 「有難うございます」この人も、退院して来る人を待っているのかな? そう思いながら、お礼を言っていると 事務員さんが、会計書を持って来てくれた。 この紙を、一階の会計に提出して、支払いを済ませれば帰れる。 カートを押しながら、歩く方が楽な私は、カートを押しながら 娘より一足先に、ディルームを出て、振り返ると 小柄な人が、ディルームに入って行く、後姿を見た。 傍に来た娘が「Bさんって、あの人でしょ、お母さんの話しと違って 随分若いじゃない」と言う「え?そうなの?てっきり私より年上かと」 「何を言ってるの、お母さんより10歳以上若いわよ」「え~~っ」 「それに、さっきの優しい人が、ご主人みたいよ」「やっぱり?」 そうじゃ無いかと、思っていたが、、、 家に帰ってからは、優しいご主人に、うんと甘えるんだろうな~。 そう思いながら、私も、一週間ぶりの自分の部屋に帰り着く。 「あ~~やっぱり家が良いな~」と、椅子に座る。 さ~て、いよいよ、ラスボスに向かって放たれた、強力な武器、抗癌剤の 副作用と言う、魔物達との、戦いが始まる。 今は、ダンジョン一階の、入り口に足を踏み入れたばかりだが もう、味覚をやられて、大好きな珈琲が飲めなくなった。 ちょっと水を飲んだだけでも、膨満感が押し寄せ、湯呑に半分も飲めない。 何かが、喉に詰まっている様な感じで、柔らかく炊いたお粥も、喉を通らず お粥を潰して、糊状にした物に、海苔の佃煮を混ぜて、何とか食べる。 だが、それもやっぱり、ほんの少しで、膨満感に負けてしまう。 そんな中、娘が買って来てくれた、小さなプリンだけが、美味しく喉を通る。 こんな調子で、副作用と言う魔物達と、戦えるのかと不安だったが ずっと寝不足だった私は、夜も待たず 夢も見ずに、ぐっすりと朝まで眠った、翌朝、目覚めた私の舌は 左右と真ん中が、酷い口内炎になっていて、動かせない程痛んだ。
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