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「久々に、泡盛とゴーヤーチャンプルーを食べたら皆んなのことを思い出しちゃった……」
そして、現在に至る。
雇用契約書の通りに二週間後で、現職場におさらばする事になった彼女。
それと追加で。夕飯も食べて胃袋が故郷の料理たちにも満たされている帰宅途中。
今の気持ちは嬉々としている。半分は。
もう半分は……、
「……どうしよう、お金が無い」
初華から連絡来る前に、職場内で居場所を無くし。その上、自暴自棄になってしまい散財沼へハマり、さよならバイバイしてしまった貯金たち。
本日、入った給料が記載されている貯金通帳をペラリと捲る。
家賃、光熱費、先月に衝動買いしてしまったクレジットカードの明細達、通信費などを残高から差し引くと……。
「残り……、七万円、かぁ……」
インターネットの解約金、賃貸アパートの契約途中で発生される解約金を更に差し引くと。
「最後に残るお金は、二万七千円……。やッばぁ……。引っ越しどころじゃないわ、コレ。あちゃー、どうするかぁ。……ん?」
いつもの帰宅通路の一本道。気分良くほろ酔い状態で歩いている時にカサリ……と乾いた音がした。主に足元から。
今履いているゴアテックス機能のスニーカーの裏に、薄っぺらい何かを踏んでしまったようで視線を落とす。
「……紙だ」
ふと視界に入った、B5サイズの白いコピー用紙。
老人のようにくしゃくしゃに皺だらけになっている状態である紙媒体。〈ソレ〉は砂埃で薄汚れていた。
若干潔癖持ちの普段の茉莉だったら、道端に落ちていた紙を拾い手に取ろうとはしない。
そのまま、素通りしてその場から去るのが、日常の一部。
でも、何故だろうか……。気になってしまったのだ。
たかが、ーー紙媒体に。
先程、口にした泡盛が脳まで回っていて、ほろ酔い状態の彼女。
上手く思考が回らずのまま、偶然踏んでしまった用紙を拾い上げる。蜃気楼のようにボヤけた内容を視界に入れる。
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