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【〈あなた〉という、理想の引っ越しをお手伝いさせていただきます!
お見積りなどご相談受付は、森塚映画館内にて。営業時間 十七時〜二十時。
ご依頼、お待ちしております。
株式会社 都治上ひっこしセンターより】
「へぇー……。引っ越しの広告かぁ。ふーん。あ、裏面にもかいてあるや。えー……と、何々。『お見積りは五千円から承ります。翌月後払いも可。お気軽にご相談ください』
へぇー……。翌月後払いもできるんだぁ〜!ーーーーはッ!?」
ここで茉莉の酔いは、醒めた。ーーいや、覚めてしまったの方が正しいかもしれない。
片手の親指と人差し指の指先に摘んでいたモノを再確認しようと、勢いよくピンッと広告を伸ばし内容をもう一度視界に入れる。
「やっぱり……、見間違えじゃなかった!ちゃんと、書いてある!!え、今何時?十八時四十四分かぁ。それなら……、今から相談しに」
ほろ酔いが抜けた今。頭の中が、引っ越しの手続きに切り替わっている彼女。
受付予約しようと、電話をと思ったが電話番号の記載が無い。
そうなると、現地へ直行するしかない現状。だが……、
「ーーって、森岡映画館って聞いた事ないなぁ……。そもそも引っ越しの相談に、なんで映画館内なのかしらね?そんなこと言ってる場合じゃないや!あぁ、もう!何処にあるん……」
そう愚痴りながら焦る茉莉。近くの交番に聞いた方が早いとし切り替え、向かおうと顔を上げた。
ここで、何か引っかかった。
物理的ではなく、ーー虫の知らせに近い【ナニカ】。
それは、左側からだった。気になって視点を、そちらへ惹かれるように変えると。
「……ーーあった!〈森岡映画館〉。見つけちゃった、かな?これは。ラッキー♬」
共に。ここで、疑問に思う。
「この通りさ、いつも通るけど。鳥居の中に、映画館なんてあったけ?」
(確か……。ここって、〈アレ〉があったような?……まぁ、いっか)
何はともあれ、目的地を見つけた茉莉。
映画館内に入ろうと、嬉々としながら軽い足取りで歩き出した。
その一週間後。
彼女が捜索願を出される事は、ーー誰も夢にも思ってもいなかった。
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