厄除師とは ー

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厄除師とは ー

◇◇◇ 「おい、ポンコツ!昼間ニートだから、せめて皆んなが食べた朝食の皿洗いくらいしろよ!!ただでさえ、昼間働かないんだからさ。お前は。まったく ーー」    ただいま、午前 九時。  此処、昔の名残が残っている昭和の田舎を感じさせる二階建ての木造屋敷内にて。  こじんまりとした自宅内の庭に、小さな野菜畑があり、池もある。自宅の裏にあたる縁側には、渡月山というこの街では有名な山がある。  そして、この家の者たちも有名である。  神龍時家。ーー六つ子が住んでいる事で有名である。表向きは。  裏では、世間で伏せられている稼業である厄祓い一族。ーー〈厄除師〉という者達である。  時は遡り平安時代。この時代は死霊、生霊などの怨念で災害が多かった。そんな怨念を鎮める為に、公主が筆頭し作られた厄祓い組織である。  平安時代から数百年は、職業の一つとして表沙汰にできていたが。大正時代に入ってから国の命令により裏稼業となってしまった。  話しを戻すが、平安時代にて。公主の元に部下として十二人いた。  公主は、これから先、彼らには厄除師としてこの世を平穏な日々にして欲しいと、想いを込めて。  動物の漢字が一つ入った〈名字〉と〈能力〉を例外を除いて、それぞれ授けた。  後に、部下である厄除師十二人を、〈十二支〉として名づける。  そして、彼ら十二支は自分たちを〈本家〉として創始者となり、本家の者達だけではなく分家にも厄除師の伝統を、現代までひっそりと引き継がれていった。  十二支本家の一つが、ーー【神龍時】である。    そんな、現代の本家である神龍時家には六つ子がいる。  今は諸事情により、現在であるが。このご時世では、子沢山の厄除師はかなりのレアケースで十二支会議で一目置かれている。  そんな事を露知らずの本人たちは、この現代の少人数の人口である長閑な田舎で生まれ、のびのびと成長していった。  そんな中。毎年、夏になると縁側から見える山の一部分に、夏蜜柑が大量にできあがる。  そんな風物を観るのが楽しみな、六つ子の一人がいる。  三男坊 ーー神龍時 嵐。  午前中は、縁側の廊下で胡座をし、夏蜜柑畑を見ながら、のんびりとしていた。そして大好物の〈チーカマ〉と酎ハイを飲み食いしながら過ごすのは、彼の日常一部である。 「おい、ポンコツ!僕の話しを聞いているのか!?そもそも、日中は皆んなが働いている中。皿洗いだけじゃなくて、洗濯、買い物しなきゃいけない立場なの理解してんの?あ、理解してたら、こんな場所で胡座かいて一人酒呑みしてないよね。ごめんね〜。ーーというか、ニート道に進んで恥ずかしくないの?あと、僕が貸した借金を早く返せよ、昼間ニート」  嵐の有意義な鑑賞タイム中に降り注ぐ、罵倒にて。更に言葉が続く。 「あ、そういえばさ。今執筆している風羅の彼氏用の嫌がらせBL小説でさ。攻めのスパダリと当て馬役の誘い受けシーンがあるけど。それ、イメージ湧かないんだよねぇ……。 嵐さ、こうしているって事は暇だよね?今から風羅の彼氏のところへ行って実演してきてよ!僕は、それを観察するからさ。ほら、呑んでいないで早く支度してきなよ」    人当たり良さそうな柔らかな雰囲気と爽やかな笑顔で、この空爆発言を落としてきた次男坊。  予想外の出来事に、嵐のおひとり様の時間は、緊急に幕を閉じた。        
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