履歴書

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キィ バタン  どうやら事務方の目には適ったようで一枚の履歴書が俺の手元に置かれた。 「江別 由紀恵(えべつゆきえ)、北海道出身なのか」 「そうなんですか」 「北海道には江別市があるからね」 「あぁ、所長は北海道出身でしたね」 「札幌だけどね」  年齢は20歳と書かれていた。 「えらい若いな、20歳」 「そう仰る所長も20歳から勤められたそうじゃないですか」 「なんだか頼りないなぁ」  薄暗い蛍光灯の下では分からなかったがデスクライトを点けた俺はその女性に一瞬で心を奪われた。 (ーーー似ている)  短めの黒いボブヘアー、垂れた目尻、薄い唇、一見すると男性かと見まごう面立ちは幼い頃に生き別れた母親によく似ていた。 「良いね」 「雰囲気も落ち着いていて良い感じでしたよ」 「会うのが楽しみだなぁ」 「所長と乗務員が会うのは研修の後ですからね」 「この子、第二種普通自動車免許証は持っているの?」 「これから2週間の自動車免許合宿に参加してもらいます」 「あぁ、じゃあ会うのはまだまだ先だなぁ」  彼女が現場に足を踏み入れるのは第二種普通自動車免許取得や研修、健康診断を経て1ヶ月先の事になる。 (早く会ってみたいな)  高等学校の男子生徒でもあるまいにと我ながら恥ずかしく思ったが俺は期待に胸膨らませた。 (どんな仕草で笑うんだろう)  最初は単純な興味からだった。その江別由紀恵が一夜を共にする相手になるとは思いも寄らなかった。
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