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最悪は、いつも雨の日から
雨の日に雨に濡れると良くない事が起こる。
小さい頃からジメジメと憂鬱で、ドコに行くにも傘を差さないとダメな雨の日が、嫌いすぎてズル休みをして親に怒られたっけ…
まぁ…これは、勝手に自分が作ったジンクスだったけど…
大人になるにつれて次第に忘れていた微妙なジンクスを、不意に思い出したのは……
今日が、たまたま雨だった雨だからだろうか?
…でっ…
自分が、いわゆるあの真実の愛とか、言うアホ達の被害者になるなって思う?
冷静な自分が、目の前で自分らの邪な恋愛観に酔いしれちゃって、脳内お花畑全開ってマジに引くわ…
「他に好きな人が、出来た !!」
なんって言うか、相手の事は知ってた。
浮気相手は、僕よりも少し年下で美形で可愛らし子。
一人じゃ生きていけない。
何って言うか、守りたくなるようなタイプで、オシャレでブランド系な服や小物に靴が、よく似合っている。
ナゼ俺が…
少し前まで、カレシだったヤツの。
他に好きな人が、出来た !! のセリフの前に俺が、浮気相手を知っているのかと言うと、先に宣戦布告を仕掛けてきたんだよ。
その顔でさ浮気相手が…
「別れてくんないかな? マコトに…二股されるのは、ボク的にイヤだし」
普通に俺も、嫌だよ。
ってか、俺の方が浮気相手にされてねぇ?
フワフワな見た目と薄い色のクセっ毛の男、以降この男をフワ男と呼ぶ。
俺自身も身体の線は細目だけど、フワ男は小動物的な小ささで…アホ元カレとの惚気話しを得意気にバイト先のレジで語り出し。
どう対応していいか、躊躇していた反応の俺に、腹が立ったのか…
胸ぐらを掴んで来たのが、元凶の始まりだった。
考えてみてくれ…
可愛い顔の男が、胸ぐらを掴んでくる恐ろしい光景を…
で、これが10時間前の話し…
そして数時間前、別バイトの居酒屋の常連客で賑わう店内で、酒を頭から掛けられ罵られ客やバイト仲間達の注目を一身に集めてしまい。バイト先に迷惑をかけたのは、言うまでもない。
バイト先から注意と出禁を言い渡されたフワ男。
俺は、店長に呼ばれ店の信用に関わると…
その場で、辞めさせられた。
一応、給与は今日まで分として後日振り込まれるらしい。
店の裏口から出て来た俺に、フワ男は、ドヤった顔と立ち姿で待ち構えていた。
しかも、その隣には…
今日の朝まで一応、カ・レ・シだったマコト ( 以降 アホ ) がニヤニヤしながら2人仲良くいちゃついていた。
「…あぁ~恥じかいた! アンタのせいだよ」と舌を出して、べぇーーっとしてきた事に…
おもいっきり。
引き気味の自分がいた。
プウッと膨れた顔も、舌足らずな言い方も、か弱そうな仕草も全てが、アホの好みを体現していて…アホを、よく知る親しい友人でさえ…
俺よりも好みに近いと、答えるだろう。
しかし…
脳内お花畑って、本当にネット界隈で目にするけど…
まさか、自分のカレだったヤツが、やらかすとは…
いや…
それよりも、誰が毎度ご飯や作り置きの支度して、食べさせて部屋を掃除して、服を洗濯して着せてやって仕事に送り度してると思ってんだ?
取り敢えず見た目を、完璧にさせてやってるのは、俺だよ?
そう言えば前に親友が、お前は、恋人に対して手を掛けすぎる。
相手を、ダメにするタイプだとか……
言っていたような…
要するに相手は、今の姿を俺が作ったとは思わず。
自分の姿を、自分が努力した結果だと勘違いしている。
その姿は、与えられた借りの姿で与える側が居なくなれば、仮の姿を持続する事は不可能になる。
清潔感のある姿も、おしゃれな姿も…
全て、俺が作ったようなものだ…
現実のアホは、メシも作れなきゃ掃除も出来ない。
ましてや洗濯も、朝の支度でさえ手間取る始末。
俺が作り置きして、冷凍してあるおかずも、明後日ぐらいまでにはなくなるだろう。
その後は、どうなろうが知った事じゃない。
それをフワ男が、知ってるのかは、疑問だけど、アホには愛想が尽きた。
これからは、フワ男がしてくれるんだろうから。
まぁ…
フワ男が、世話焼きタイプなのかは、知らんけど…
仲良くやってくれ…
素のマコトを、真実の愛とやらで包んで…
互いに自滅して欲しい。
俺は、もう関わりたくない。
本当の自分の姿が、新しいカレシさんのフワ男に知られた時アホとフワ男は、どうするのか見物だ。
「お前…見物だじゃねぇーよ。忠告しておいたろ。お前は、ダメンズメーカーだって、マコトだっけ? 別れろって…オレ。何度も、言ってたろ? いいヤツならオレが、紹介してやるって !!」
ハイ。
ご忠告通り。
それが、現実になりました。
親友の吾住とは、中高と一緒で俺の恋愛対象が、同性と言う事に早い段階から気づかれていた。
だからと言って、からかわれる事もなく冗談まじりなマジな恋愛の相談をしたことが、何度もある。
「で…どうすんの?」と、吾住が問う。
「まぁ…アホとフワ男には、もう関わるつもはりないし。関わりたくない。アホの家には、通ってただけだから。実害がないのは、幸いって感じ?…これと言った荷物も無いし…」
実質上俺は、実家住まいの…
「ニート?」
「違う !! バイト掛け持ちで、働いてるし!」
「でもその2つ共が、ダメになったんじゃねぇの?」
「そうなんだけど…」
さらっと、さっきは言ったけど…
掛け持ちしてた昼間のコンビニで、客としてやってきたフワ男に胸ぐら掴まれ。
他のバイト仲間や客が、引き離してくれたけど…
「店で暴れんなって…クビになりました…」
「お前…悪くねぇーじゃん?」
「変な噂が立つと、アレだからって…」
で、夜のバイトの居酒屋で…
「同じく客として来てたフワ男に酒を、頭から掛けられました…」
「げっ…オレ。ドラマでしか見た事ねぇーわ…あるんだな現実にそう言う修羅場…」
「それで…店の後ろに下がらされてクビを宣告されて、裏口から出てきたら。アホとフワ男に出待ちされてました……」
…で、冒頭の場面に戻ると…
「最悪だな」
居酒屋の店長にも、店員と客が痴話喧嘩するとか、店の信用に関わるから…
って、辞めさせられた直後だっただけに…
「これが、人生初の修羅場かぁ…ってなってさぁ…」
そして、今日たまたま遊ぶ約束をしていた吾住に色々あって、早目に仕事が上がるからと待ち合わせよりも、早く来てもらって相談しているところだったりする。
「どっちも、割りの良いバイトだったんだろ?」
「ん~~っ…割りの良いってか、働けるならドコでも……」
吾住は、表情をくもらせる。
「お前さぁ…別の友達経由で、ついこの間、知ったんだけど…アホに貢いでるって、ホントなの?」
「えっ…」
マジかと言う顔をされた。
「お前…アレが、アホならお前自身は、バカだろ? 何貢いでんだよぉ……」
ワナワナし始める吾住。
「だって、欲しいって言われると…つい買ってあげたいとか…甘えられると、尽くしたいなって……」
「本当にお前。他人対しても、自分に対しても、ダメンズメーカーだな…」
改めて指摘されると、惨めって言うか…思わず違うと…
首をブンブン振り続けてきたけど…
「だね…」と、認めざるえないとか…
そんな気持ちなる。
「それ意外になにがある? お前さぁ…リハビリした方がいいぞぉ~っ」
リハビリ?
「そのダメンズメーカーを、治せ矯正しろ! お前自身顔は、かなり良い顔してんのになんで、こうダメ男とばっかりと付き合うのか…」
「…ダメ男と顔は、関係無くない? それに俺、そこまで顔は良くないし…」
「…お前さぁ…家に帰ってじっくり自分の顔、鏡で見てみろよ。そして、そのモッサイ髪を切れ! 毛先整えるじゃなくて! バッサリと切ってしまえ!」
「えっ…こんな人どこにでも居るし。普通じゃない?」
「じゃねぇーなからな。毎回、バカにされてるから。こうなんじゃねぇの? イメチェンでもして振られたアホ男らを、見返してやれよ !! 分かったな。これからは甲斐甲斐しく世話をやくようなヤツとは出会うな! よし良いヤツ紹介してやるから。安心しろ!」
折角だけど、その良い人をダメンズにしてしまいそうな勢いが、あるからなぁ……
分かりやすく言えば、親の影響力が強い。
父は居るだけで、何もしない。
出されたモノを食べるだけで、服も出された物を着る。
そんな何もしない父の世話を甲斐甲斐しく焼く母…
「寧ろ実家が、ダメダメじゃん。今時なんもしねぇー出されたモノ食う。服を着るとか…逆にダッセーぞ? もうこの際だから家を出て働けよ…」
「そうなんだけど…」
貢いでいた…ために貯金なんって、そんなにないし。
「部屋を借りるにしても、お金が…」
隣に座る吾住の顔が物語っているように。
アホに貢いだ結果が、これだ…
夏場近いってのに…
雨のせいか、少し肌寒い風が吹き付けるものだから。
ゾクッとなる。
あぁ…そうか。
酒掛けられて、雨の中。
あの2人が、去ってから店の裏手の蛇口で髪だけでもって、すすいだから。
濯いだ髪から滴り落ちる水滴が、こめかみをつたい目に入り込んだ途端に切なくなる程、目に染みた。
「…それで、小雨にも関わらず肩とか髪が、びしょびしょなんだ」
「そんな所…」
たまたま持ち合わせていたタオルで、その水滴を拭った。
「オレは、てっきり雨に濡れると嫌な事が起こるって言う。昔のジンクスってヤツを破ったからヤケでも、起こしたのかと思ったよ…」
「……アハハッ……」
そう言えば、吾住にはかなり前に、昔信じていたジンクスの件、話した事あったなぁ…
それを、覚えててくれたんだ。
本当に色々と気が付いてくれて、話しやすいし。
親友にだけは、恵まれたようだ。
今日は、朝からずっと…
雨が、降り続いていた。
そこまで、強くもなく。
決して弱くもない。
気付かない人には、どうでもよくて…
気になる人には、厄介で…
人の気持ちに雨は似ている。
「…なぁ…」と、吾住。
「ナニ?」と、返す俺。
「今からイメチェンしねぇ? 知り合いの美容師が、昨日からカットモデルを、何人か探してんだ。良い感じにモッサイヤツをって言われててどう? 最後の1人に? 推薦する」
「急だね…」ってか、良い感じにモッサイ?
「こう言う時は、気分を変えるのも手だ!」
イメチェンかぁ…
やろうかなぁ…
「料金は?」
「実質。タダ。カットモデルって好きに髪を切らせてくださいだからさぁ…人によっては、クーポン券とか…オプションが付くらしいけど…そいつは、毎回タダが、条件なんだ! 資料用に写真を撮られるけど…中々、無いことだし。経験的な?」
どうせ髪は、切っても伸びるし。
失恋しましたって事で…
「…お願いしようかな」
「おっ! ノリ良いじゃん。今から連絡して、行ってみるか? 丁度、向こうの店も終わる頃だろうし。終電まで、まだ少し時間もあるし」
「うん」
どうせ…今から。
ずっと、暇だし。
髪も、お酒でベタベタのボサボサだし。
知り合いの美容師に連絡を取り終えた吾住が、電話を切り美容室に向かおうと一緒に歩き出した数秒後、今度は吾住のスマホにメッセージが届いた。
それも、立て続けに…
「あっ…ワリー。ワリー。知り合いからだわ。えっと…」
吾住は、万人受けする顔立ちで、コミュ力も高い。
あんまり突っ込んだ話しは、しないけど…
吾住は、バイだよな?
カレカノも…居たことあるし。
普通に甘える感じで、誰とでも仲良いし。
類は、友を呼ぶってわけではないけど…
俺みたいな知り合いも、かなりに多そうな感じに見える。
何かと、仲を取り成したり? 友達を紹介して人脈を得ているようで、そっちこっちに顔が利く。
俺の場合は、中学の頃は顔見知りでたまに話す程度だったけど、進んだ高校が一緒だったこともあってよく話すようになったのが、仲良くなった切っ掛けだと思っている。
そんな吾住が、しばらくスマホのメッセージを眺めていた。
「…直ってさぁ…植物育てたりするの好きだっけ? いや…好きだったよな?」
母の趣味で、室内には観葉植物や多肉植物とか、サボテンとか…
庭では、春先から秋頃までの季節限定で小さな家庭菜園をしている。
ガキの頃は、見よう見まね。今は、ネットで調べて植え替えの時期や水やり肥料とかやってるけど…
( 母から。やらされている )
「ふ~ん。じゃさぁ…オレの知り合いにさぁ…隣県で」
実家の古民家を、改築して、そのとなりのハウスで、花の苗やハーブとか観葉植物系の直営とかネットで売ったりしてる人が、居るんだけど…と話し始めた。
「たまに俺も見るよ。ネットの苗屋さんとか、観葉植物を取り扱っておる所」
「やっぱり。話が早い! で、なんだけど、夏場の毎週土日限定で表のハウスを開放して販売したり寄せ植えしたりしてるんだ。で、去年まではバイトで、オレとか手伝いに行けたんどけど…」
「あっ…」
吾住は、今現在就活生だった。
「手伝える雰囲気じゃないだ。それに、通って出来る仕事じゃねぇーし…」
家庭菜園でも、毎日の世話や水やりは、欠かせないものね。
「金曜日から泊まり掛けで開店準備したり。長期の休みも住み込み……まがいな? 感じで手伝ってたしなぁ…」
「…成る程。それで夏場の吾住は、捕まらないとか、土日なったら姿を消すとか…それが、理由だったのか? 」
「そんなこと言われてたのオレ?」
「うん」
「マジか…」
何やらマジに落ち込んでいる。
「取り敢えず。オレが行けないってことは、今回は決定だから。直…行ってくんない?」
「えっと…」
それは、
「住み込みで?」
「直が良ければな…在来線で、通うって手もあるけど、お前の家駅から遠いし。大変じゃねぇ? それに毎日通うってなると交通費も、半端じゃねぇし。バイト代が、そのまま消えるかもな。だから忙しい時は、オレも泊まり込みさせてもらってたし…」
「…でも、なんかなぁ…家庭菜園と違って、ちゃんとした…そう言う仕事したことないし。逆に迷惑になりそう?…部活の合宿みたいにちょっとしたことで、ギクシャクしたくないし…」
ただでさえ知り合いの知り合いで…面識0だぞ。
「そんな人と……」
ん?
吾住誰と電話してんの?
「うん。そうそう。オレの推薦! 実家で、少し家庭菜園とかしてて素人よりも、役に立つと思う。で……うん。分かった伝えとくから!」
いや…だから。
いつの間に誰と電話してんだよ!
「あぁ~っ、コレ? メッセの主! 下の名前サキって言うんだけど…」
「今…何って、言ったんだよ」
「行くって…」
「俺の了承は?」
「だって、お前バイト先全部クビになったんだろ?」
「そうだけど…」
「あのさぁ…しばらくここから離れてみぃ…元カレの部屋、お前の行動範囲にあるだろ? で、奇行な今カレが、お前を見下して付けてくるかもよ…」
レジで胸ぐらを掴み罵り。
居酒屋では、酒を頭からぶっかけながら罵る。
「噂って、回るの早いから」
「…今直ぐに…どっかに引きこもりたい」
「だから。行ってこいサキっんとこ! アイツは、仕事熱心って所があるけど…悪いヤツじゃない。それに…何かあったらオレにも連絡よこせよ。なっ!」
吾住なりの励ましなのか…
「優しさだよ」
ニッと笑う吾住は、俺を手まねいて美容室に連れていってくれた。
まぁ…何って言うか、フワ男の傍迷惑な奇行により仕事を、故意に辞めさせられた俺には、他に選択肢が見当たらないのと、アレだけの騒ぎだ…
こんな狭い町で、噂が広まらない方が、不思議かもなぁ…
「おっ、サッパリしたじゃん!」
「そう?」
「そこそこ良い顔してんだから。前髪で隠すとか、もったいねぇなぁ…」
何を言われても、フワ男の顔良さには、負けそうどけど…
「そんなに美人なの?」
コクコクと頷く俺に吾住は、首をかしげる。
「そんな目立つヤツの話しは、聞かなかったよな…」
「アホは、勿論。フワ男も社会人みたいだから。仕事でこっちに来てるだけかもよ…」
「フワ男ってのも社会人なのか?」
別にスーツを着ていた訳じゃなかったけど、それなりに常識を持った服装だった。
「普通にオフィス街で働いてそうな?」
「オレの知り合いには、社会人も多いけど…フワ男って感じになヤツは、見当たらないし結び付かないなぁ…」
「ふ~~ん…」
俺達が、美容室を出たのは、午後10時過ぎだった。
すると吾住が、時間を確認しつつドコかへまた電話を掛け始めた。
「そっちは、落ち着いたか? うん。オレらも用事が終わったところ……うん。一緒に居るけど…替わる?」
急に吾住からスマホを渡されて…
「えっと、誰?」
「サキだよ。雇い主!」
何話すの? 自己紹介?
「あっ…えっと…大沼 直です。宜しくお願いします」と、やっと出た言葉が…それだった。
『こちらこそ。はじめまして、速川 サキと言います。急に無理言ってスミマセン。本当に助かります』
と、声は…
とても落ち着いて…
ギスギスした気持ちを、抱えていた俺の耳にスッーと染み込んだ。
癒されるとは、また違って…
こんな肌寒い雨中でも、充分な暖かさを感じられる。そんな声のトーンに救われるようだった。
会ったこともない人に安心感なんって、安易すぎるかも知れないけど、そう気持ちを揺り動かせる優しさに救われた…
とは、大袈裟だろうか?
「…少しの間ですけど、お世話になります」
『直くんだっけ? これから宜しくね』
「ハイ」
そう素直に答えてしまった自分に一番、自分が驚いた。
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