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「それじゃあさよなら」と言って、すべてを振り切るように勢いよく坂をのぼっていく。ちょうど頭上に真っ赤な夕焼け。太陽に吸い込まれていくみたいだった。
影がこちらに向かってのびてくる。その背中が遠ざかっていくほどに影だけが。どこまでのびるのだろう。永遠にのび続けてくれないか。姿が見えなくなっても、ずっとここに。
思わずしゃがみこんで縦長にのびきった奇妙な影に触れてみた。坂の上であの人が振り返る。夕焼けのせいで顔が見えない。なんだか声が震えている気がした。
「引っ張らないでよ、行けなくなっちゃう」
影はもう、それ以上のびなかった。
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