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いくつもの国で人々はパニックに陥った。
結界が壊され、多数の村を吹き飛ばされて。現れたのは、人類が束になっても絶対にかなわないと言われている最悪の魔族、アビス。従者のネス。そして。
ギャウウアア!!
かつて九つの国を滅ぼした、魔獣ケイオス。あたりに咆哮が響く。大混乱となる、連合軍の到着は間に合わない。各国がそれぞれ動くしかないが、連携が取れないのは致命的だ。
「あ、チビちゃんが元気になった。やったね」
怒りに震え殺気立つ魔獣。真っ赤な目が王宮を捉える。自分を長年封じていたもの、自分を殺そうとしたもの。封印されていた百年間ずっと意識があったケイオスは、怒りが収まらない。腹も減った。
「やっぱり可愛いなあ」
「ああやって見ると、悪戯好きワンコで愛嬌ありますね」
ぐちゃぐちゃになっていく国を見て、アビスとネスは嗤う。
「ちょっと遊んでくる」
「はい」
「最前線は魔法騎士団で固めよ! 光魔法で結界を張り魔族を弱体化させる!」
「何それ、新手のギャグ?」
「!?」
最強の魔法騎士である国王が、大急ぎで部隊に指示をしている時だった。国王の真後ろに、にこにこ笑う少年がいる。驚愕の表情の兵士たち。国王は目を見開いて振り返るが。
「そっちまわりが好きなんだ、わかったよ」
左から振り向くと、その方向に軽くペチンと国王の頬を叩く。すると国王の首が高速回転をしてちぎれて、飛んだ。
「ぎゃああああ!?」
「ひいいい!」
最強と言われた軍が、パニックとなる。
アビスの出現と、心から頼りにしていた最強の国王があっさり殺されたことに。飛んだ頭はネスが上空から蹴り返し、アビスはキャッチした。
ポン、ポン、と右手から左手へ。左手から右手に投げながら、うん、と頷く。
「チビちゃん、とってこーい!」
ゴゥ! と凄まじい音を立てて国王の頭が飛んでいく。それを追いかけ、ケイオスは駆け抜ける。人々を、建物を、攻撃魔法を吹き飛ばしながら。
ギャオオオオオオアアアア!
ケイオスの喜びの咆哮に、国が一つ吹き飛んだ。
人類はパニックに陥った。
この魔族と魔獣に勝つ方法が、現段階で何一つないのだから。
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