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第二話 ストーカーはイケメン
イケメンにストーキングされている。
なんで?
俺が聞きたい。
なんか気づいたら後ろの方にいるし。
なんか視線を感じたら授業中に見られていたりする。
「田山ー。加藤くんと仲いーの?」
と女子に聞かれる始末。
これは、まずい。俺の立場的に。
と、いうことで、俺は加藤を無理矢理家に招いた。
「はい、今から、俺の秘密を暴露します! 拍手!」
「わー?」
加藤は絶対何が何だかわかっていなかったが、素直に手をたたいた。
根はいいやつなのかもしれない。
ていうか、よく知りもしないクラスメイトの家によくついてきたな……。
顔がいいから心配である。
よく知りもしないおじさんについていきそうだ。
その時は助けてやろうと思った。
「はい、俺の秘密はなんでしょうか! 加藤くん、お答え下さい!」
「フィギュア集め……?」
「……、俺ってそんなイメージなの……?」
「俺より恥ずかしい秘密ならいいな、と思って」
「残念! 不正解です!」
そして俺は、キッチンの棚から小麦粉を取り出した。
「正解は、お菓子作りです!」
「……、わー……?」
また素直に手をたたく加藤。この子、頭大丈夫かしら……。
キャラがぶれるほど心配になった。素直すぎる。天然なのかもしれない。
それから俺は、手際よく材料を混ぜ合わせ、マドレーヌを作った。
食べた加藤は、
「売ってるやつみてえ」
とほめてくれた。
その笑顔に、俺はうっかりときめいた。
「……今度はうちに来いよ」
と、俺のマドレーヌを5個も食べた後、加藤は俺を誘ったのだった。
女子なら大喜びだっただろう。
それから数日後。
俺は加藤の自宅におじゃました。
ごく普通の一軒家だった。
加藤の部屋の前に行く。
加藤が部屋のドアを開けると、
ファンシーを通り越してファンタジーな空間が広がっていた。
まず、ぬいぐるみが多い。ウサギの種類が多めである。
そして、全体のテーマカラーがピンクである。カーテンまでピンクなのは恐れ入った。
「女の子の部屋みてえだな……」
俺は思わずつぶやいた。
「……引いたか?」
加藤が不安げに聞くので、俺は努めて明るく、
「俺も似たようなもんだから気にすんな!」
と返した。
と、いきなり加藤が抱きしめてきた。
「え?」
なんかいい匂いがする。
いや、なんだ、この状況。
あったかい。
いや、じゃなくて……。
加藤の顔が目の前にあった。
唇を、奪われた。
一瞬、触れるだけ。
「田山」
加藤が、抱きしめたまま言う。
「俺と、付き合わないか?」
順番逆だろ、と思った。
俺は勢いに気圧されて、頷いていた。
こうして、晴れて俺にイケメンの彼氏ができてしまったのである。
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