これが勇者の剣の真説

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 勇者の剣は、誰でも見ることができる。勇者の剣には、誰でも挑戦することができる。勇者の剣は、かつてこの世界に勇者がいた証である。  その剣は、街はずれにある礼拝堂の中に保存されていた。これは、誰でも知っていることであるが、勇者の剣は真の勇者にしか抜くことは出来ない。そして、勇者の剣には――引っ掻き傷の一つすら、誰にも付けることが出来ない。それくらい頑丈に出来ていた。そういう意味では、警備の必要など無いのだが、警備員は置かれていた。 「セオ、レイ、ピートの三人は、明後日からの一週間、勇者の剣の礼拝堂の警備を担当すること。指導係として、研究生五年のキティが付くから、指示に従うように。」  魔法学校の研究生三年の男子三人は、先生からそう伝えられた。警備員は、魔法学校の生徒が教育の一環として勤めることになっているのである。 「よろしく。」  ピートとは顔見知り程度のため、セオとレイは軽く挨拶だけして、部屋を出た。部屋の前は、長い廊下が横に伸びている。この魔法学校は、魔法に適性のある研究生のための学校で、予備学校で通常の勉強をしていく中で選ばれた生徒だけが、入学を許されている。選ばれなかった生徒たちは、社会教育学校の方に進学している。セオとレイは、親同士の仲が良かったことから、小さい頃からの幼馴染みで、魔法学校に入学して三年目で十四歳になる。  魔法学校の生徒たちは、勇者の剣の礼拝堂以外にも、王宮の関連施設や様々な場所での警備を担っている。どれも、それほど重責にはならない場所の警備である。警備の日程については、掲示板に張り出されているから、それを確認しなければならない。掲示板がある部屋は、入退室の管理がされていて、いつ誰が掲示板を確認しに来たかの記録がされている。  セオとレイも、掲示板を確認しに行った。明後日からの警備は、午後から夜にかけての警備のようだった。その時間帯の授業は受けられないため、補習を受けられるように準備しておかなければならない。 「ようやく、俺たちも警備の任務か。楽しみだな。」 「うーん、俺はそんなに楽しみでもないんだけど……。」  レイはそんな気持ちだったが、セオはそれとは違った反応をする。魔法士になった時の主な仕事が警備かと言えば、そうではない。魔法学校の生徒が警備を任される理由は、あくまでも研究生にとっての社会勉強のためである。 「えー、でも俺たち一緒の任務で良かったよね?」 「うん。まあ、それはね。」  レイは、セオにそれだけは確認した。掲示板に背を向ける時に、セオが軽く笑顔を見せたので、レイはそれに安心して一緒に部屋を出た。
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